バンダイナムコがおくるフライトシューティング・エースコンバットより、
小林啓樹作曲、7の『Archange』。MISSION 18後半の戦闘で流れます。
エースコンバットシリーズのうち、12年ぶりのナンバリングタイトルとして登場した本作。ユージア大陸を舞台に、オーシア連邦とエルジア王国の間で戦争が勃発、主人公はオーシア国防空軍のパイロットとして、エルジア側に傾きつつある世論の向かい風に晒され、謂れなき罪で懲罰部隊に転属させられながら、戦争の渦中に巻き込まれることになる。従来作と比べて空や雲の表現力が大幅に強化され、悪天候下での戦闘や落雷による機体の一部損壊など、今まで以上にリアル志向の空戦を堪能できるようになっている。本編のほか、PSVRのみ対応のVRモードが用意されていて、出撃準備から実際のドッグファイトに至るまで、真に迫った本物のパイロット体験を味わえる。総じて大迫力の飛行体験を肌で感じられる秀作に仕上がっている。後にSteamやスイッチに移植された。
本作の音楽を担当するのは大久保博氏、北谷光浩氏、小林啓樹氏、中鶴潤一氏、中西哲一氏、渡辺量氏の六名。元バンナムで現在フリーの小林氏を除き、いずれもバンナムに所属している作曲家たちである。このうち渡辺氏がサウンドディレクターで、小林氏がメインコンポーザーとして半数以上を作曲している。このほか、作曲以外の分野でのサウンド関連スタッフは150人以上携わっている。シンフォニック調のシリーズサウンドを踏襲しつつ、本作ではコンセプトとして掲げる空の革新のほかに、有人機と無人機、人間とAIといった対比を意識していることから、特に双方の特徴を意識した曲づくりを心がけたという。サウンドトラックは6枚組で100曲以上を収録したものが発売された。
全20ミッション中のMISSION 18「LOST KINGDOM/王無き国」の後半におけるミハイ戦で流れるのがこの曲である。ミハイは作中何度も対峙することになる亡国出身の老齢のエースパイロットで、老骨に鞭を打ってなお空を飛ぶことを望む人物である。彼との最終決戦を彩るにあたって、はじめはラテン語の低音コーラスで幻想的に始動し、1分過ぎでようやくストリングスが入ると、不穏な和音を奏でながら徐々に勢いづく。1分24秒からは、コーラスはコーラスでも今度は高音で切羽詰まった歌声を紡ぐことで、ブラスの分厚い伴奏ともども、空前絶後の臨場感をもたらす。以降も声を主体に、メリハリと焦らしを最大限に利かせた円熟したオーケストラを響かせ、2分40秒のサビではいっそう生気に満ちたアンサンブルを奏でる。その様子はさながら、王無き国で大空こそ我が王国と仰ぐミハイにとっての国歌のような仕上がりになっている。曲名のアルカンジュは「大天使」を意味するミハイのTACネーム(二つ名)であるため、実質的に彼のテーマ曲と言っても過言ではない一曲である。
天界の王の矜持のようなものが凝縮されていて、これ以降エンディングまでずっと小林さんの作曲ということもあって印象深いです。以下、同じくミハイ戦で流れる(フレーズを共有している)曲、『Two Pairs』と『Sol Squadron』もあわせてどうぞ。