カプコンがおくるスタイリッシュ英雄アクション・戦国BASARAより、
鈴木まり香作曲、『Tuonela』。山崎殲滅戦で流れます。
戦国乱世の常識を覆す戦国BASARAシリーズの記念すべき第1作にあたる本作。戦国時代を舞台に、伊達政宗や真田幸村など、史実の熱き英雄(HERO)たちが天下統一を目指して戦場を駆けることになる。政宗が豪快に英語を叫んだり、本多忠勝がロボットのようないでたちをしていたりするなど、時代考証をかなぐり捨てた破天荒なキャラ設定と世界観が最大の特徴かつ魅力で、戦闘は歯応えよりも爽快さや痛快さを重視した一騎当千風のゲームバランスを取っている。1作目にしてシリーズの基礎をつくり上げ、その存在感を知らしめた仕上がりとなっている。後に2と英雄伝と抱き合わせでPS3向けにリマスターされたHDコレクションが発売された。
本作の音楽を担当するのはCHAMY.伊師こと伊師正好氏と鈴木まり香氏。伊師氏は音楽制作会社T's MUSICに、鈴木氏はカプコンに所属する作曲家である。このうち伊師氏は、他のT's MUSICの作曲家共々その後のBASARAシリーズでも長く作曲を手がけることになるが、鈴木氏はシリーズに携わるのは現時点で最初で最後である。本作は戦国時代の枠に囚われない独創的な作風が目立つが、楽曲のほうはオーケストラやロックなどを取り入れつつも基本的に和風で統一されていて、意外と落ち着いている(もちろん激しいナンバーもある)。サウンドトラックは存在するが、主題歌と一部楽曲が未収録である。
山崎殲滅戦は明智軍の領地でおこなわれる戦いで、史実で言うところの本能寺の変の直後の秀吉軍と明智軍の激突をベースにしたステージである。そこで流れるこの曲は、お経で叩く木魚を思わせるような、独特な打音の連続から始まり、徐々に優雅なオーケストラを伴って雄大な盛り上がりを見せる。ゆったりと流れる大河のような、勇壮かつ幽玄な風情を目一杯漂わせがら緩やかに旋律が紡がれていく。なお、曲名にあるトゥオネラとは、フィンランド神話における冥府、あるいは彼岸と此岸を隔てる川のことで、この曲では和楽器を使って和風っぽく仕上げつつ、そこはかとない異国情緒も誘ってくれる。
殲滅戦という破壊的な字面に似合わぬ幻想的な曲調ですが、光秀の最期というイメージで考えるとすんなり当てはまる気がします。