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#926 『Clover Ruins』(Falcom Sound Team jdk/XANADU NEXT/PC)

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日本ファルコムがおくるアクションRPGザナドゥより、

Falcom Sound Team jdk(石橋渡・宇仁菅孝宏・園田隼人・村山貴英)作曲、

ネクストの『Clover Ruins』。クローヴァー遺跡で流れます。

ファルコム屈指の名作・ザナドゥの20周年記念の新作として登場した本作。湖に霧がかかると姿を現すとされる奇岩城の伝説をめぐり、主君を失い没落した元騎士の主人公は、城に眠る聖剣ドラゴンスレイヤーを求めるうち、古代に栄えたザナドゥ王国の謎に迫ることになる。拠点となるハーレックの街から各地の遺跡を探索していくフル3DのアクションRPGで、遺跡内では戦闘はもちろん、箱を動かして道を切り拓くパズル要素も充実している。カードを入手して降霊することでステータス上昇やアイテム強化など任意の恩恵をもたらすガーディアンシステムが特徴で、スキルや武器の熟練度、パラメータの割り振りなどと並んで自分好みにキャラの性能をカスタマイズできる。現代的な色合いを帯びつつ、ザナドゥの名を冠するだけあって遺跡探索とキャラメイクの面白さを重視した手堅い作風に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはFalcom Sound Team jdkの面々。具体的な内訳は故・石橋渡氏、宇仁菅孝宏氏、園田隼人氏、村山貴英氏および外注スタッフの神藤由東大氏の五名である。このうち神藤氏は編曲担当とのことである。いずれの作曲家も、イース英雄伝説などでの作曲経験はあるものの、ザナドゥシリーズには初参加である。本作では奥深い世界観にマッチした神秘的で魔術的なファンタジーサウンドを中心に、コーラスやオーケストラ、なかには激しいギターを轟かせたメリハリ豊かな楽曲が揃っている。また、ところどころに初代のメインテーマアレンジが散りばめられているのも印象的である。サウンドトラックは主題歌も含めて収録されている。

クローヴァー遺跡で流れるのがこの曲である。街のすぐ北にある序盤のダンジョンだが、そこそこ広大で、一気に全域を攻略できるわけではなく、特定の道具がないと進めない箇所もある。そうした冒険心をくすぐるマップ構成の緑あふれる廃墟を彩るにあたって、ピアノのゆったりとしたアルペジオのイントロが静かに好奇心を駆り立てる。17秒頃から主旋律としてオカリナのような笛の音が加わると、その美しさと憂いを湛えた調べが、冒険者の心を掴んで離さないような幻惑的な没入感を生む。1分17秒からすこし曲調が変わり、穏やかさを保ちつつ2分手前でサビが入ると、奥ゆかしくも円熟した盛り上がりを見せる。2分半でフレーズが終わるかと思いきや、さらにもう一段、今度はシタールと思しき独特な音色を交えて再度力強くサビを奏でる。序盤の手探りな段階での遺跡探索に対する期待と不安、その両方を同時かつ均等に刺激してくれるような、絶妙なバランスの良さを誇る一曲である。

催眠術にかけられるような……魔法のような曲ですね。アルペジオシタールが共通しているから、というのもありますが、個人的な第一印象は、クロノトリガーの『時の回廊』を初めて聴いたときに覚えた、あの心奪われるような感覚と似ています。参考までにあわせてどうぞ。

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