帆足圭吾作曲、レプリカント1.22の『泡沫ノ言葉/他者』。人魚姫のボス戦で流れます。
耽美的で重厚な世界観とアクション性で知られるニーアの第1作のうちのレプリカントに対するバージョンアップ版として登場した本作。滅びの世界を舞台に、不治の病に罹った妹・ヨナを救う手がかりを求めて主人公の青年は人語を話す白の書とともに旅立つことになる。刷新されたグラフィックとキャラデザイン、60fpsの滑らかな動作性、ボイスの追加と再録、武器アクションの見直しとロックオン機能の導入など、リマスターの枠を超えた各種調整が施されている。原作のDLCを標準搭載したうえで新たなエピソードやエンディング分岐が追加されていて、元々充実していた世界観描写や設定の緻密さはさらに磨きがかかっている。肝となる操作感やマップ構造、演出などは原作を忠実に踏襲している。総じてリマスター以上だがあえてリメイク未満に収まるようなプレイフィールを実現した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは岡部啓一氏、瀬尾祥太郎氏、髙田龍一氏、高橋邦幸氏、帆足圭吾氏、Oliver Good氏。いずれも岡部氏が主宰する音楽制作会社MONACAのメンバーである。このうち岡部氏、髙田氏、帆足氏は原作から、瀬尾氏と高橋氏はオートマタからシリーズに携わっている。本作では音楽がすべてアレンジされていて、原作の味を活かしつつも新しいフレーズを加えて1曲1曲の重みや深みを強調している。追加エピソード用に新曲が書き下ろされているのはもちろんのこと、おまけとしてオートマタのBGMに切り替えられる機能もあり、隅々まで音楽に浸ることができる。サウンドトラックは3枚組で収録されたオリジナル盤のほか、クワイアを軸としたアレンジアルバムが存在する。
人魚姫のボス戦で流れるのがこの曲である。人魚姫とは原作の設定資料集に掲載されていた短編小説を再現した本作の追加エピソードで、難破船に乗っていた身元不明の少女と海岸の街の郵便配達員の儚い物語が紡がれる。この曲の下敷きにはEmi Evans氏が単独ボーカルで柔らかく歌い上げる『泡沫ノ言葉/家族』(作曲は岡部氏)があり、壮絶なオーケストラアレンジを施して戦闘曲へと再構築している。初めはコーラスやハープ、グロッケンシュピールを散りばめて、ゆっくりと破滅に向かっていく不穏さを生み出す。12秒でコーラスが高く声を張り上げるのを合図にオーケストラが一気に牙を剥くと、もう後戻りできないのだと直感させられる。悲痛なストリングス、悲愁なブラス、悲憤に満ちたコーラスに加え、36秒以降には悲劇的なピアノの伴奏も顕著に聴き取れるようになる。まるですべての音が触手のように絡み合って哀切極まりないアンサンブルを披露するが、それぞれの楽器には独立した存在感があり、交われぬ距離を保っているかのようである。しばらく一息に盛り上げたあと、2分11秒頃でピアノとコーラスによる疑似的なソロパートがあり、再びオーケストラが合流する際にはさらに心揺さぶる悲愴感を醸す。ひたすら悲しく、不条理なほどに美しい一曲である。
以前紹介したソウルハッカーズ2のラスボスの曲もちょうどこんな感じの噎せるような悲哀にあふれていて良いですよね。『泡沫ノ言葉/家族』もあわせてどうぞ。