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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1564 『ラストバトルⅡ』(帆足圭吾/ソウルハッカーズ2/PS4・PS5・XOne・XX|S)

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アトラスがおくるRPGソウルハッカーズより、

帆足圭吾作曲、2の『ラストバトルⅡ』。ラスボス戦の第二形態で流れます。

真・女神転生の派生作品である悪魔召喚師の活躍を描くデビルサマナーシリーズのうち、25年ぶりにソウルハッカーズの名を冠するナンバリングとして登場した本作。21世紀中頃の日本を舞台に、人知れず迫る世界の滅びを検知した電子生命体・Aionのエージェントであるリンゴは、滅びの回避に不可欠であるにもかかわらず殺されてしまったサマナーたちを蘇生させ、共に陰謀に立ち向かうことになる。設定や用語など前作から継承しているものはあるが、基本的には作風やシステム含め現代向けにリブートされている。戦闘はターン制コマンド式、仲魔の扱いはペルソナ寄りで、新要素として弱点を突くとその分だけスタックされてターン終了時に強力な一斉攻撃を放てるサバトが導入された。物語やキャラは裏社会らしいビターさがあってドライな距離感が保たれる一方で、陰鬱さや毒々しさは控えめでいたちごっこのような展開が続く。マップ構造やクエストまわりも冗長さがあるがボリュームは充実していて地道に遊ぶことができる。総じて前作とは路線が異なるものの、JRPGとしてまずまずの水準でまとまった仕上がりとなっている。一日遅れてSteamでも配信された。

本作の音楽を担当するのは井上馨太氏、岡部啓一氏、瀬尾祥太郎氏、高橋邦幸氏、帆足圭吾氏、Oliver Good氏。いずれも音楽制作会社MONACAに所属する作曲家である。このうち岡部氏(本作のサウンドディレクター)と瀬尾氏は主題歌の作編曲も手がけていて、瀬尾氏はさらに作詞もおこなっている。これまでデビルサマナーシリーズはもちろん、女神転生に連なる作品群はほとんどアトラスの内製で制作されてきたが、本作は例外的に外注されている。近未来の裏社会らしさとポップでアニメチックな雰囲気をバランスよく絡め合わせたアーバンでサイバーなエレクトロニックサウンドが揃っていて、曲数が多いなかで一つ一つが入念にセンスよく作り上げられている。特にコーラスやデジタルなエフェクトを取り入れた鮮やかなスタイルが目立つが、場面に応じてアコースティックな音色や和楽器などを用いてメリハリをつけている。サウンドトラックには主題歌込みで3枚組で収録されている。

ラスボス戦の第二形態で流れるのがこの曲である。ラストバトルは第一と第二形態に分かれていて、前半は繊細なピアノとソプラノから始まって徐々にオーケストラの存在感が増す『ラストバトル』が、後半はメロディーを共有しつつ壮絶なアレンジが施されたこの曲が流れる。理想と合理の果てに対峙せざるを得なくなった相手との最終決戦を、冒頭から強烈に威圧感たっぷりに響くオーケストラとコーラスで盛り上げる。シンセや鐘、オルガンをふんだんに用いて神聖かつ破滅的な雰囲気を充満させ、やがて33秒からストリングスを伴って緊張感がどんどん膨れ上がっていく。48秒から聴こえるコーラスは濃い悲愴感を帯びていて、1分3~18秒で短くスタッカートを効かせて切迫感を強める。そのままコーラスを軸として激しく美しく歌い上げ、1分57秒以降しばらく勢いを抑えてメランコリックなフレーズを奏でるが、そこからまたじわじわとテンションが高まる。2分半頃で一旦収束すると、直後にようやくサビに辿り着き、一際特徴的な灼け付いたような歌声が聴こえるようになる。これまでのコーラスとは別物の、魂の奥底から痛哭するような苛烈な響きがあり、全身全霊全存在を賭けて戦う覚悟が伝わってくる。途方もなく尊く過酷な一曲である。

『ラストバトル』も同じく帆足さんの作曲です。あわせてどうぞ。

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