VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1359 『Kyūsai - 救済』(岡部啓一/NieR Re[in]carnation/iOS・And)

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スクエニがおくるコマンドアクションRPG・ニーアリィンカーネーションより、

岡部啓一作曲、『Kyūsai - 救済』。ガチャ画面で流れます。

ニーアシリーズ初のスマホ向けタイトルとして登場した本作。檻(ケージ)と呼ばれる謎の空間を舞台に、訳も分からず檻の石畳の上で目覚めた少女は、ママと名乗る不思議な生き物に導かれ、檻に点在する武器の記憶を辿りながら失ったものを取り戻すことになる。耽美的なグラフィック、絵本のように美しく謎めいた世界観、武器に宿る記憶を紐解いていく特徴的なストーリーテリングなど、シリーズのエッセンスはスマホになっても健在である。戦闘システムは最大3人編成のリアルタイム進行のコマンドバトルで、敵味方ともに通常攻撃は自動でおこなうが、スキルゲージが溜まっていれば手動でスキルを発動させることができる。属性や状態異常、コンボ、キャラごとの得手不得手や育成など、一通りのRPG要素が揃っている。加えてスマホ作品らしく基本プレイ無料・アイテム課金制でスタミナを採用していて、ガチャ、各種オート機能、高難度クエスト、PvPのアリーナをはじめとする定番コンテンツが用意されている。操作性やテンポなど触り心地のもどかしさは多少あるものの、ニーアの雰囲気を手元で味わえる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは岡部啓一氏と瀬尾祥太郎氏。いずれも音楽制作会社モナカに所属している作曲家である。このうち岡部氏は本作のミュージックディレクターを務めていて、瀬尾氏は作編曲に加えて一部コーラスも手がけている。両名ともニーアシリーズではおなじみの作曲家で、本作においてもニーアらしさを感じさせるうえで音楽が果たす役割は大きい。シリーズならではの幻想的で退廃的な音楽性を維持しつつ、過去作でみられるメロディアスな盛り上がりと比べて、本作は身に染みる繊細さ、淡泊な味わい深さを重視したような印象がある。曰く「スマートフォンの画面でプレイしてても聴き疲れしない、聴き飽きないような、ミニマルおよびアンビエントテイストの音楽」を目指したとのことである。サウンドトラックは現時点で各1枚組で第2弾まで発売されている。

ガチャ画面で流れるのがこの曲である。扉をタップして開けた先に光に包まれた立方体が現れ、それが棺に姿を変えて中からガチャ結果が出てくる、というのが一連のガチャ演出である。レア度によって立方体の色が異なったり特殊な演出が加わったりする。祈りを込めて立ち会う瞬間を彩るにあたって、ハープの音色が終始細やかに切れ目なく奏でられる。その傍らでゆったりと鐘の音や弦を指ではじくピチカートを添えることで、じんわりと胸に響くような格別な聴き心地を生み出す。扉を開く前はオフボーカルだが、扉を開くとコーラスが加わる仕組みで、上記動画だと1分3秒以降で違いを聴き取ることができる。救済という曲名が示す通り、結果はどうあれ、すくなくとも曲は非常に慈しみ深く包み込んでくれるような温情に満ちている。とても心に来る一曲である。

基本スキップしがちかもしれませんが、ガチャの曲が良いとモチベーションになりますね。