MTOがおくるパズルゲーム・KURULIN FUSIONより、
岩崎健一郎編曲、『ゴールドベルグ変奏曲 第3変奏』。
原曲はバッハのクラシック曲で、ミッションモードで流れます。
主に児童向けのソフトメーカーとして知られるMTOによるPSPダウンロード配信ソフトにあたる本作。上から降ってくるピースを縦12×横9の盤面上に同色で並べて消すスタンダードな落ち物パズルで、作風は大きく変わっているが同社の仔犬でくるりんシリーズの系譜を継いでいる。暗色で幾何学的な背景に光り輝くパズルピースや消滅演出が印象的で、モダンでスタイリッシュなデザインを押し出している。ピースにはエナジーオーブとフュージョンブロックの2種類あり、オーブを同色で並べるだけでは消えないが、そこにブロックを繋げることで吸収・消滅する仕組みである。ブロックは最大3×3にまで膨張し、最大状態で消すと同色のすべてのピースが一気に消えて連鎖を巻き起こすフィーバーに突入する。ブロックをいつどこに繋げるかによって消すタイミングや範囲を決めるトリガーとなるため、ある程度は計画的に盤面を制御しながら攻略することができる。通常のアーケードモードのほか、30種のお題に挑むミッションモード、スコアを競うタイムアタックモード、それにアドホック通信による通信対戦モードが用意されている。総じて目新しさや奥深さには欠けるが、手頃な価格で遊べる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは岩崎健一郎氏。ジミー岩崎名義でも知られる作曲家兼キーボーディストで、主にステージ演奏やテレビへの楽曲提供で活動している。ゲーム音楽方面では本作の開発元であるランカースの作品に頻繁に携わっていて、MTOの仔犬・子猫シリーズやジュエルペットのゲーム化作品群での作曲経験もある。本作では植松伸夫氏が音楽監修に就いていて、バッハのクラシック音楽をテクノアレンジするというコンセプトを打ち出しているが、実際に編曲しているのは岩崎氏である。特にバッハの晩年の作品にしてハープシコードの大作として名高いゴルトベルク変奏曲(表記違いでゴールドベルグとも)をフィーチャーしていて、鮮やかな電子音楽調に再構築してタイムレスな魅力を生み出している。サウンドトラックは1枚組でデジタル配信されている。
ミッションモードで流れるのがこの曲である。前提としてゴルトベルク変奏曲は全体で2つのアリアとそれに基づく30の変奏から成り、3の倍数の変奏はすべてカノンである。よって第3変奏にあたるこの曲もカノンがベースで、テクノ風のアプローチで淡々としつつも味わい深くフレーズを重ね合わせている。イントロで理知的な雰囲気を整えたあと、16秒から親しみやすく流麗なピアノを奏で、46秒過ぎにはシンセストリングス、1分2秒にはサックスと思しき音色を加えて静かに盛り上げていく。1分17秒あたりで一際甲高く伸びる音色でフレーズを締め括った直後、狙いすましたかのように弦楽器のスリリングな演奏が入ることで絶妙にテンションとモチベーションを引き上げてくれる。1分32秒からはシンセの軽快なメロディーが聴こえ出し、それから1分間は絶え間なくリズミカルに音階を行き来する。やがて2分33秒でシンセと入れ替わりでオーケストラヒットが周期的に響くようになり、一通り間奏を終えると再びピアノが入ってループに至る。いつまでも色褪せず聴き続けられる魅力がある一曲である。
原曲が素敵で、アレンジもアレンジで新たな曲として成り立っている感じがしていいですね。ハープシコード奏者のスコット・ロスさんによる原曲演奏音源もあわせてどうぞ。