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#263 『フィールド』(川井憲次/サンサーラ・ナーガ2/SFC)

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ビクターエンタテインメントがおくるRPGサンサーラナーガより、

川井憲次作曲、2の『フィールド』。フィールド曲として流れます。

アニメ監督として有名な押井守氏がディレクターを務めたことで知られるサンサーラ・ナーガシリーズのうち、2作目にあたる本作。竜のタマゴとともに竜使いのギルドに捨てられていた孤児の主人公は、ギルドで唯一親身になってくれた天才少女・アムリタの消息を追うべく、タマゴから孵ったばかりの白竜と旅立つことになる。前作同様、主人公はレベルアップせず竜のみが強くなるほか、武器に耐久度が存在するなど、基本的な仕様を踏襲していて、本作では新たに竜を複数体育てられるようになっている。サンサーラサンスクリット語で輪廻)が意味する通り、物語やシステムにもその価値観が反映された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは川井憲次氏。アニメや映画などの劇伴作曲を多く手がけている、押井氏の作品でもおなじみ作曲家である。前作でも複数の作曲家と一緒に曲づくりに携わっていたが、本作では全曲を単独で作曲している。前作は合計40曲とファミコンの作品にしてはかなり曲数が多いほうだったが、本作の楽曲はその半分にも満たないコンパクトな出来となっている。戦闘曲が1種類しかなく、ボス戦もラスボスも同じ曲、とバリエーションは乏しいが、本作の曲はいずれも幻想的な作風に見合った逸品揃いで、発売から13年越しにようやくオリジナル音源を収録したサウンドトラックが登場した。それ以前にはアレンジサントラが発売されている。

フィールド曲として流れるのがこの曲である。八つに分かれた階層世界を巡る遥かなる冒険の舞台を、優しく切ない曲調で彩る。寂寥感あふれるコーラスと哀愁漂うアコースティックギターのゆったりとしたイントロから始まり、透き通るように奏でられるパンフルートによる主旋律が、三拍子特有の感傷的な空気感をつくりだす。安らかで、それなのにどこか胸騒ぎを覚えずにはいられないような、本作の世界観ならではの憂愁を滲ませた一曲である。

アレンジサントラに収録されているのが、原曲の雰囲気を一切壊すことなく、むしろ深化させたとすら言える素晴らしいものなので、ぜひお聴きください。

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