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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#384 『Colored Engine』(Joel Schoch/FAR: Lone Sails/PC)

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Okomotiveがおくる探検アドベンチャー・FAR: Lone Sailsより、

Joel Schoch作曲、『Colored Engine』。スタッフロールで流れます。

スイスのインディーデベロッパー・Okomotiveのデビュー作である本作。かつて海であったが、今はすっかり干上がってしまった大地を舞台に、文明の跡地を巡りながら、陸を走る船に乗って終末の世界を旅することになる。道中に転がる燃料を集めて補給したり、船の設備を強化したり、悪天候に見舞われて苦心したりするイベントこそあるが、廃墟には敵もいなければ生物の気配すらほとんど感じられず、状況を説明するテキストや台詞の類は一切登場しない。そもそも作中には明確な目的さえ設けられておらず、淡々と終末世界を旅するだけのアドベンチャーゲームに仕上がっている。ただひたすら退廃的な世界観に、不思議と心を打たれるかもしれない出来栄えとなっている。後にXboxOne、PS4、スイッチ、スマホなどに移植された。

本作の音楽を担当するのはJoel Schoch氏。スイス出身の作曲家で、得意楽器はピアノである。氏はこれまでに地元の演劇やミュージカルでの作曲経験はあるが、本格的にゲームを手がけるのは本作が初めてである。本作の楽曲はいずれも、歴史の終わった後の世界での一人旅というイメージに寄り添うような、静かで儚げなピアノ曲が中心で、独特な荒涼感と孤独感が漂うものが多い。サウンドトラックはBandcampやSteamなどで配信されている。

旅路の果てに辿り着いた結末、その余韻に十二分に浸らせてくれるのが、スタッフロールで流れるこの曲である。イントロから力強く繰り返されるピアノの流麗なフレーズは、小刻みに震えるように奏でられるギターの音色と相まって、徐々に緩やかな盛り上がりを示す。1分49秒あたりで満を持して木管の主旋律が入ると、これまで歩んできた道のりを振り返るかのごとく情緒豊かな展開を見せる。それでいて終始落ち着いた、心地良い退廃に満ちた音使いは、終末世界の優しい安寧を象徴しているように感じられる。本作の有終(あるいは憂愁)の美を飾るにふさわしい、静謐と寂寥にあふれた一曲である。

昨日に引き続き、終末ものからの紹介です。ポストアポカリプスって良いですよね。