VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#356 『Hold Baroque Inside』(岩田匡治/BAROQUE/SS)

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スティングがおくるニュータイプ3D-RPG・BAROQUEより、

岩田匡治作曲、『Hold Baroque Inside』。スタッフロールで流れます。

セガサターン向けの3DアクションRPGとして登場した本作。大熱波による天変地異で何もかもが歪んでしまった陰鬱な世界で、神経塔に向かうよう命じられた記憶喪失の主人公は、自らの内に残る罪の感覚を頼りに探索を進めていくことになる。絶望的に暗い終末的な作風が特徴で、死ぬことを前提としたシビアなバランス調整が施されている。一人称視点のハクスラローグライクRPGとして非常に歯応えのある仕上がりとなっている。後にPSに移植されたほか、PS2Wii向けにリメイクされ、キャラクターボイスやムービーの追加、それに三人称視点への切り替えが可能になるなど、多くの変更が加えられた。

本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏。当時フリーの作曲家で、スティング制作の作品に関しては本作以前にトレジャーハンターGで複数人と一緒に作曲を務めた経験がある。本作では全曲を単独で作曲していて、いずれの楽曲も基本的に得体のしれない環境音や機械音で構成されている。作中で絶えず漂い続ける淀んだ空気感を体現した独特なサウンドは、本作のアンニュイな世界観を形成するうえで欠かせない要素となっている。サウンドトラックはボーナストラックも含めて収録されたもの(廃盤)と新規ボーカルを追加して再販売された復刻盤が存在する。

スタッフロールで流れるのがこの曲である。今まで聴いてきたものとは一線を画するメロディアスな旋律が印象的で、ピアノを主軸に据えた、静かに佇むような繊細な音使いは、怪しげな効果音とともに奇妙に耽美的な雰囲気を醸し出す。伴奏にストリングスの緊張感あふれるフレーズの繰り返しが加えられると、ますます得も言われぬ退廃感が増していく。その天に召されるような流麗な旋律は、数多の死を乗り越えてここまで辿り着いたという達成感をいっそう強めてくれる。不気味さのなかに確かな美しさが息づく一曲である。

ピアノが綺麗ですよね。