タイトーがおくる魔法アクションストラテジー・タクトオブマジックより、
古川典裕作曲、『果て無き彷徨 "The Voyager"』。水の地形で流れます。
魔法を描き、魔物を操る魔導士アクションRPG・ロストマジックの続編にあたる本作。魔法の王国・エンタールが闇の皇帝の脅威に呑み込まれようとするなか、片田舎に住む主人公の少年は、帝国軍に襲われる村を目の当たりにして魔法の才能を開花し、やがて国を揺るがす大きな運命に巻き込まれていくことになる。前作はDSでの発売だったのに対し、本作はWiiにハードを移していて、シナリオ面における繋がりはないが、ルーンと呼ばれる魔法文字を画面上に描いて仲間を指揮するゲーム性は継承している。ジャンルとしてはリアルタイムストラテジーであり、様々な仕掛けに満ちたマップを攻略するにあたって、Wiiリモコンとヌンチャクを使って数々の魔法を繰り出しながら、刻一刻と変化する戦場を駆け抜けていく。かなりはっきりと明暗を分けるストーリー分岐が特徴で、王道かつ重厚なファンタジーの世界観を楽しめる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは古川典裕氏。サウンドプロデュースはタイトーのサウンドチーム・ZUNTATAが担っている。古川氏はなかやまらいでんという別名義でも知られる作曲家で、かつてはZUNTATAに所属していたことがあり、離籍後も本作含めタイトーの作品に多く携わっている。本作では魔法を扱った王道なハイファンタジー調の世界観にあわせて、煌びやかなオーケストラサウンドが揃っているが、操作の忙しさや、戦場での臨場感を伝える効果音の多さゆえにすこし集中して聴き取りづらいきらいがある。サウンドトラックは残念ながら未発売だが、一部の楽曲はニンドリの付録CDに収録されているほか、公式サイトから作曲者本人による解説付きで試聴可能である。
戦闘マップのうち、水の地形において流れるのがこの曲である。古川氏の解説にある通り、その曲調は「前半はゆっくりと流れる大河のように、後半では飛沫、あるいは激しい瀑布のように」展開していき、水の持つ豊かな包容力と、水害をもたらしかねない秘めたる脅威をひとまとめに表現している。流麗なピアノやチェロ、勇壮なトランペットやフルートなど、オーケストラの諸楽器が絡み合って紡ぐ深遠な旋律は、水の表裏一体の性質を的確に描き出している。優雅であると同時に豪快でもあるような、美しくも力強い勢いに満ちた一曲である。
息をのむほど素敵ですね。