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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#929 『DADDY MULK』(小倉久佳/ニンジャウォーリアーズ/AC)

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タイトーがおくる横スクロールアクション・ニンジャウォーリアーズより、

小倉久佳作曲、『DADDY MULK』。1面と6面で流れます。

ダライアスに次ぐ3画面筐体のアーケード作品として登場した本作。悪の独裁者・バングラーによって荒廃した世界を舞台に、革命軍のリーダーであるサー・マルクが開発した殺人マシーン・KUNOICHIとNINJAは、バングラー暗殺任務に赴くことになる。全6面構成、回数制限なしでボタン押しっぱなしにすればガートも可能なクナイと、回数制限ありだが遠距離攻撃ができる手裏剣を駆使して、横長の3画面に広がるステージを攻略していく。自機がアンドロイドという性質上、銃撃などを受けて被弾した箇所は外装が剥がれて内部のメカが露出するようになり、見た目の変化のみならず、同一箇所に再度攻撃を喰らうと被ダメージが倍増する特殊なシステムを採用している。シビアな世界観と難易度、強烈な個性を放つ音楽とが相まって、硬派にまとまった仕上がりとなっている。後にPCエンジンメガCDアーケードアーカイブスの一環としてPS4やスイッチに移植されたほか、スーファミ向けのリメイク、PS4・スイッチ向けの再リメイクも発売された。

本作の音楽を担当するのは小倉久佳氏。当時タイトーサウンドチーム・ZUNTATAに所属していた作曲家で、OGR名義でも知られる。本作では、派手で目立つ音楽を制作してほしい、という企画側の要望に応じて、当時としては画期的だったサンプリング音源を大胆に用いたダイナミックなサウンドが揃っている。その先駆的な楽曲群こそが本作最大の魅力といっても過言ではないほどの出来栄えを誇る。サウンドトラックについては、AC音源のオリジナル盤が複数存在するのに加え、移植やリメイク音源のもの、ライブ音源、アレンジ盤など、充実した品揃えが楽しめる。

最初と最後のステージで流れるのがこの曲である。開始早々、出陣の合図のような鬨の声と角笛が轟くと、続いて奏でられる調べは非常に勇ましく、突き抜けるような疾走感を漂わせる。キャッチーなメロディーラインを支える重厚なベースラインは、熱さだけでなく渋さも感じさせ、時折挿入される独特なボイスが、ますます味わい深い印象を与える。1分50秒から30秒ほどノンストップで高速な音色が紡がれると、フレーズが終わる頃に、鬨の代わりに今度は歓声が挙がり、やがて聴き覚えのある旋律に回帰する。が、ループに至るにはさらにもう一山待ち構えていて、3分13秒のオーケストラヒットとともに満を持して津軽三味線のソロパートが入る。パーカッションのみを伴って激しく掻き鳴らされるその雅やかな一幕は、後半にかけて勢いが増していき、最高潮に達したところで、さながら演奏を賛美するかのように再び例の歓声が沸く。4分近い長さの尺を颯爽と駆け抜ける一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。最初と最後で流れるという采配も、曲名が忍者たちの生みの親、生殺の鍵を握るサー・マルクを指しているというセンスも、音楽の良さを引き立ててくれますね。リクエストの際に一緒にお送りいただいた1990年のライブ映像もあわせてどうぞ。

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