HanStone作曲、『少年冒険家』。ガイレフの丘で流れます。
韓国のネクソンが開発と運営を手がける基本無料のオンラインゲームとして登場した本作。ケルト神話を下敷きに、エリンと呼ばれるファンタジー世界で、プレイヤーはときに冒険したり、ときにほのぼの生活を楽しんだり、ときに吟遊詩人になりきって音楽を演奏したりできる。戦闘や探索、シナリオを攻略するメインストリームのモード以外にも、料理、裁縫、アルバイト、ペットの飼育など、実に様々な遊び方が提供されていて、なかでも音楽の演奏に関しては、楽器や楽譜(MML記法で自作可能)、仲間を揃えて本格的に曲を演奏できる破格の充実ぶりを誇る。韓国では2004年に、日本では翌2005年にサービスを開始し、現在に至るまで様々なアップデートがおこなわれている。
本作の音楽を担当するのはHanStone氏、StudioEIM、S.F.Aなどの面々である。HanStone氏の本名はイ・ソクジュ(이석주/Sok-Ju Lee)、韓国出身の作曲家である。StudioEIMは韓国を拠点とする音楽制作会社で、実際にどのメンバーが作曲に携わっているかは判然としていない。S.F.Aは同じく韓国出身のSevin Dong-Il Kwak氏のユニットを指す。なかでもHanStone氏は初期(チャプター1のG1~G3)の作曲を単独で全曲手がけているマビノギサウンドの生みの親である。本作ではケルトの世界観にふさわしい、民族音楽調のものやハイファンタジー風の壮大なオーケストラの楽曲が数多く取り揃えられている。サウンドトラックは現在のところチャプター1の楽曲を収録したものと、日本未発売だがチャプター6の楽曲を収録したものが存在する。
北に商業都市ダンバートン、南に鉱山都市バンホール、西にセンマイ平原、ウルラ大陸の要所を繋ぐ三叉路・ガイレフの丘で流れるのがこの曲である。ピアノ独奏による流麗なイントロから始まり、ストリングスとエレキギターが一気に開放感たっぷりな旋律を奏でることで、日差しが眩しいこの乾燥地帯に引けを取らぬほど、非常に晴れやかで爽やかな雰囲気を醸し出す。曲後半に差し掛かると、即興風のピアノ速弾きが惜しみなく挿入され、壮大な冒険への期待と興奮を熾烈に掻き立ててくれる。まだ見ぬ世界の広さを肌で感じさせるような瑞々しい迫力に満ちた一曲である。
あの世のガイレフ(『静寂』)は打って変わって幽霊に出くわしそうなひんやりとした曲に様変わりします。恐怖心を煽るような、それでいて奇妙に落ち着くような感じがします。あわせてどうぞ。