カプコンがおくるベルトスクロールアクション・ファイナルファイトより、
松前真奈美作曲、『ROUND5 BAY AREA1』。5面前半で流れます。
ベルトスクロールアクションの金字塔として名高い本作。暴力と死が蔓延る超犯罪都市・メトロシティを舞台に、暴力集団のマッドギアに拉致された娘を取り戻すべく、ハガー市長ら3人の男たちが立ち上がることになる。奥行きのあるサイドビュー形式のフィールドにて格闘技を中心とした華麗な立ち回りで敵を蹴散らしていくオーソドックスかつ骨太なゲーム性が特徴である。全6面+ボーナスステージから成り、開始時にハガー、コーディー、ガイのいずれかを選んで進めていく。ハガーは一撃が重いパワー型、コーディーはマーシャルアーツとナイフ捌きに長けたバランス型、ガイは忍術使いのスピード型で、どのキャラを使うかによって敵との駆け引きや対処法が異なる。具体的なアクションに関しては、8方向レバーと2ボタン(攻撃とジャンプ)の組み合わせによって敵を掴んだり投げたりまとめて薙ぎ払ったり、ときにはナイフや鉄パイプなどの得物を手にして多彩な技を繰り出すことができる。攻略に慣れを要する分、やがて並み居る敵をちぎっては投げる爽快感を味わえるようになる。ベルトスクロールならではの病みつきになる魅力に満ちた仕上がりとなっている。後にスーファミやX68000、メガCD、GBA向けに移植されたほか、スイッチやPS4などの各種コレクション系の作品にも本作が収録されている。
本作の音楽を担当するのは坂口由洋氏、下村陽子氏、高岡宏光氏、民谷淳子氏、藤田晴美氏、藤田靖明氏、松前真奈美氏。スタッフロールのMUSIC SOUND欄では坂口氏のみ、Youki chan's papa名義で記載されていて、他6名への言及はないが、後年に発売されたサウンドトラック等によって作曲陣の全容が明かされた。いずれも当時カプコンに所属していた作曲家である。本作は同じくカプコン製のストリートファイターと世界観を共有していて、同シリーズだと坂口氏は初代、下村氏は本作発売後に2において作曲を手がけているため、ゲームのジャンルは異なるが音楽の雰囲気は近しいところがある。超犯罪都市という舞台設定に沿うように、剥き出しの荒々しさとぎらついた感触のあるサウンドを多く取り揃えている。サウンドトラックについては、オリジナル音源の他に機種ごとの音源違いなどもまとめて収録したサウンドコレクションが存在する。
ROUND5「BAY AREA」の前半で流れるのがこの曲である。満月とビル群が映える夜の湾岸を舞台とするステージで、景色こそロマンチックだが戦うさまはワイルドの一言に尽きる。5面は大きく3エリアあってエリアごとに曲が変わり、公衆トイレの手前までは『~BAY AREA1』、トイレの周囲と内部は『~BAY AREA2』、トイレを抜けると『~BAY AREA3/ROUND6』(6面後半でも用いられる)が流れる。芸が細かく歯応え満点なステージ構成の前半部を彩るにあたって、軽く調子を整えるイントロに続いて7秒頃からメインメロディーが始動する。エレキギター風の金属質な音色と、さながら破裂音の如く激しく響くドラムを駆使し、聴いていると闘志が燃え滾ってくるような痛快な旋律を奏でる。20秒以降で即興風の勢いを帯びながら高音を掻き鳴らすと、ますます熱気が高まって喧嘩がヒートアップしていく感覚を味わえる。その曲調からは、悪者を懲らしめているというより、自分も一緒になって暴れ回って無法地帯を作り上げているような、ある種ピカレスク的なノリが感じられる。潔いほどバイオレントな一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。スーファミ版は梶野俊夫さんによる編曲で軽めだけど渋く、メガCD版はT's MUSICによる編曲で生演奏風のロックに仕上がってます。他作品だと、ストリートファイターZERO2では山本節生さんによる編曲でジャジーな感じに、ナムコクロスカプコンでは古代祐三さんによる編曲でブラスロックっぽくなっているので、よければ聴き比べてみてください。