Terry Cavanaghがおくるデッキ構築型ローグライト・Dicey Dungeonsより、
Chipzel作曲、『Come On Down』。キャラクターセレクト画面で流れます。
VVVVVVの開発者として知られるインディークリエイター・Terry Cavanagh氏の新作にあたる本作。願いが叶うというダンジョン・Dicey Dungeonsにやってきた6人の冒険者たちは、ダンジョンの主のLady Luckによってサイコロの姿に変えられ、運命と出目に任せてダンジョン踏破に挑むことになる。入るたびに構造が変わるダンジョンをサイコロを振って進める内容だが、単なるすごろくではなく戦闘に重きを置いたローグライトバトルゲームである。戦士なら二回攻撃やサイコロの振り直しが可能、盗賊ならターンごとに敵の装備を盗んで使用できる、発明家なら装備を作り変えたり一時的に集中してサイコロの出目を固定したりできるなど、冒険者の素性によって性能や必殺技が大きく異なる。小さい出目でも装備のビルド次第で有効活用できる戦術の幅があり、運要素による先の読めないスリルを味わいつつ、臨機応変に攻略法を編み出すデッキ構築の醍醐味をも味わえる。総じてリプレイ性が高く練り込まれた仕上がりとなっている。後にスイッチ、Xbox One、X|S、PS4、PS5、アプリに移植された。
本作の音楽を担当するのはChipzelことNiamh Houston氏。アイルランド出身の作曲家で、チップチューン系の楽曲制作を得意とする。Terry Cavanagh氏の作品には本作以前にSuper Hexagonに携わったことがある。本作ではチップチューンを下敷きにしつつ、ギャンブル的な緊張感と昂揚感のあるジャズやファンク、フレンチハウス風のエッセンスを取り入れている。コミカルでレトロな電子音と、ノリとスイングを備えたラッパやウッドベースなどの音色がうまく絡み合って、独自の精彩に富んだサウンドを生み出している。サウンドトラックはSteamのDLCやBandcamp経由で配信されている。
キャラクターセレクト画面で流れるのがこの曲である。ゲーム開始前に冒険者の素性を選ぶシーンで、みんなサイコロの姿をしているが外見や仕草にはしっかり個性があり、眺める楽しさがある。高まる期待感に応えるようにこの曲はアップテンポでリズミカルなチップチューンに仕上がっていて、中低音域を中心としてじりじりと焦らすような響きがある。メロディーを牽引するのはレトロな音色だが、伴奏にはファンキーなブラスが用いられていて、12秒からは低音部を支えるダンディーなベースや鮮やかなハンドクラップを交えてメリハリをつけている。23~24秒で急下降する音階を披露すると、続くフレーズではパーカッションが強調されてこれまで以上に勢いづく。聴いていると機運も運気も上がりそうな一曲である。
この曲にはワクワクハラハラドキドキが詰まっていて好きです。曲名は「降りてきなさい(=こっちにおいで)」、人を招待したり歓迎したりするニュアンスっぽいですね。