フロムがおくるアクションRPG・ダークソウルより、
桜庭統作曲、『Gwyn, Lord of Cinder』。薪の王グウィン戦で流れます。
非常に高難度だが攻略し甲斐のある名作・Demon's Soulsを手がけたスタッフによる精神的後継作として登場した本作。古竜を打ち滅ぼした火の時代が終わりつつある世界を舞台に、死ぬことすら能わぬ不死人の主人公は、囚われていた牢獄から脱出して己が使命を確かめに巡礼の旅に出ることになる。気を抜けば即死という厳しい難易度はそのままに、終始暗澹としていながらもどこか陽気さが入り混じる中世ハイファンタジー調の世界観が特徴である。武器や防具の種類が増加し、装備重量の概念が導入されたほか、本作では魔法や回復の使用に回数制限が設けられている。張り詰めた雰囲気が漂う非同期型のオンラインプレイも健在で、中毒性とやり応えが両立した仕上がりとなっている。後にPS4、XboxOne、PC、スイッチ向けにリマスター版が登場した。
本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。ダクソシリーズには続編の2や3でも作曲に携わっている作曲家である。本作では重苦しさを表現するための手段としてか、ボス戦以外でははっきりとBGMが流れることは稀で、それゆえいざボスと対峙する戦闘場面では、その硬派すぎる難度とともに激しく印象に残る楽曲群が揃っている。楽曲の多くはコーラスにオーケストラという構成の、絶望的で威圧的で、プレイヤーの心すら蹂躙するようなものとなっている。サウンドトラックはゲームの特典として付属されている。
薪の王グウィンとは、かつて太陽の光の王と呼ばれ、古竜を滅した英雄の成れの果てである。その彼とのラストバトルで流れるこの曲は、それまでの楽曲のテイストとは一線を画する、純粋なピアノ独奏曲である。静けさに満ちたその音使いは、燃え盛る火を操る彼とは対照的にとても穏やかな印象を与える。その淡々とした曲調からは、温もりよりもむしろ冷たさが窺える。曲自体は美しいが、燃え殻と化してまで戦い抜く彼の姿は、ここに辿り着くまでに否でも刷り込まれた恐怖を強く感じさせる。美しさと恐ろしさを同時に味わわせてくれる一曲である。
ダクソ3では北村友香さんによる、この曲の旋律を組み込んだ『Soul of Cinder』というものがあり、後半戦におけるピアノとバイオリンが奏でる静謐なアンサンブルが魅力です。あわせてどうぞ。