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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

隔週末の作曲家談議 vol.023:庄司英徳

作曲家について語るコラムです。

vol.023で扱うのはセガの庄司英徳(しょうじ・ひでのり)氏。

代表作は「龍が如く」「F-ZERO」「スーパーモンキーボール」など。

なお、記事に記載された内容はすべて2019年11月9日現在のものです。

まずは一曲。

www.youtube.com『Shotgun Kiss』(F-ZERO GXGC/2003年)

セガ任天堂による初のコラボ作品F-ZERO GXにおいて、一攫千金を夢見る者たちが集う魅惑の地・ベガスパレスで流れるのがこの曲である。ベガスパレスにはスプリットオーバルとダブルブランチの二種類のコースがあり、いずれもダッシュプレートが多数配置されていることからハイスピードなレースが繰り広げられることになるが、この曲はそれにあわせてな賑やかな疾走感を誇る。エレキギターサクソフォンのけたたましい協奏は、昼夜を問わずネオンライトが煌めく歓楽街の雰囲気をよく表現していて、ハイリスクハイリターンなスリルに満ちた昂揚感あふれる一曲に仕上がっている。

庄司英徳氏、1975年生まれ、茨城県出身の作曲家。得意楽器はギター。音楽とは直接関係のない専門学校を卒業したのち、1996年にセガに入社、なかでもアーケードタイトルを多く手がける第2AM研究開発部、通称AM2研に配属される。デビュー作はおそらく同年のアーケード用レースゲームセガ ツーリングカー チャンピオンシップ」(1996年)と思われる。同作はとりわけ音楽に力を入れていて、avex traxとコラボをしてテクノやユーロビートといった幅広い楽曲を収録している点が特徴的だが、庄司氏もセガ側のコンポーザーとして、川口博(Hiro)氏らとともに楽曲を提供した。

www.youtube.com『Inductee』(セガ ツーリングカー チャンピオンシップ/ AC/1996年)

同作における庄司氏の唯一の担当曲として、車種を選択する際のセレクト画面で流れるのがこの曲である。アグレッシブなドラムビートが印象的な一曲で、しっかりと刻み込まれるリズムが、じりじりと焦燥感を蓄えていく。その鋭利なギターサウンドは、激しく自己主張することなく、あくまで伴奏に徹するが、それでも確固たる存在感を放っていて、同作全体を貫くエキサイティングな雰囲気づくりに大きく貢献している。レースが始まる前からテンションを高めてくれる一曲である。

入社後すぐにその力強いギターサウンドを披露すると、続いて3D格闘ゲームファイティングバイパーズ2」(1998年)で、前作を作曲したDavid Leytze氏に代わって単独で作曲を手がけ、新たなシリーズサウンドを開拓する。同じ年に3Dアクションスパイクアウト(1998年、ちなみにこの作品は後に「龍が如く」を送り出す名越稔洋氏がディレクターを務めた)にて、鈴木俊介氏とともに作曲をおこない、順調にキャリアを積む。また、直接の続編ではないものの、関連作品である「スラッシュアウト」(2000年)にも携わる。

2001年にゲームキューブが発売されると、そのローンチタイトルとして登場したアクションゲームスーパーモンキーボールにて、大隅栄氏と冨田晴義氏と共作で音楽を担当する。それまではどちらかというと硬派な作品を手がけることが多かったが、同作ではそのカジュアルな世界観を尊重しつつ、新ハードの音源を駆使したサウンドを生み出す。なお、同作は名越氏率いるアミューズメントビジョン(旧AM11研)が開発を手がけている。

www.youtube.com『Jungle Stage』(スーパーモンキーボールGC/2001年)

最初のステージであるジャングルサーキットで流れるのがこの曲である。洗練されたビートにどこかファンキーな印象を与える音使いとが相まって、非常にノリの良いハウスミュージックに仕上がっている。同作は球に入ったおサルをゴールに導くだけ、というシンプルなルールとは裏腹に、独自の慣性に基づく特殊な操作性や、歯応えのある難易度など、やり込めばやり込むほど奥深さが増していくような仕上がりとなっていて、この曲はそうした独特なアンビアンスを鮮やかに描き出した一曲であると言えよう。

続編のスーパーモンキーボール2」(2002年)でも引き続き冨田氏らとともに作曲している。ゲームキューブの作品では他にも、同じくアミューズメントビジョンが開発をおこなった任天堂のレースゲームF-ZERO GX(2003年)に携わっていて、レース曲を中心に、フュージョンやメタル系の楽曲が多かった今までのシリーズサウンドとは一味違う、テクノ調の浮遊感あふれる楽曲をつくり出す。

2003年には名越氏により龍が如くが立案され、庄司氏は当初からこのプロジェクトの一員として携わる。極道社会をテーマにするという性質上、初めこそ社内では否定的な評価が多かったが、いざ2005年に発売されると、結果としては100万本を超える大ヒットとなり、サウンドディレクターおよびメインコンポーザーを務めた庄司氏にとっても大きな出世作となる。曲をつくる際は、まだ映像が出来上がっていない段階で台本を精読し、しっかりとイメージを掴んだうえで作曲し、実際のプレイ画面にマッチするかどうかを自ら実機で遊んでみて確認しているとのことで、特に楽曲と使用されるシーンに温度差が生じていないか、という点を重視しているという。翌年には早くも続編の龍が如く2(2006年)が発売されると、氏は引き続きメインコンポーザーを担当しつつ、外部からノイジークロークの坂本英城氏らも楽曲の制作に協力することになる。

時期を前後して庄司氏は、Hiro氏や光吉猛修氏らが所属するセガの社内バンドH.のメンバーとなる。担当はギターで、H.自体はすでに2001年に結成されていたが、庄司氏は5年遅れてユニットに加わった。ライブ活動やサウンドトラックのアレンジなどを手がけ、今まで以上に活躍の幅を広げていくことになる。

ゲームの話に戻る。スピンオフの龍が如く 見参!(2008年)で時代劇風のサウンドを生み出すと、続いて龍が如く3(2009年)でも大半の楽曲を作曲する。今まではサウンドディレクターをやったりボイスの処理や効果音制作にも携わったりしていたが、同作でようやく作曲の仕事に専念できたらしく、とりわけ戦闘曲はいずれも出色の出来栄えとなっている。

www.youtube.com『Clay Doll On The Cradle』(龍が如く3PS3/2009年)

最終章、東城会直系白峯会構成員との戦闘で流れるのがこの曲である。病院で繰り広げられるラストバトル手前の集団戦ということで、桐生の「死にてぇヤツだけかかって来い!」という台詞とともに連戦が始まるが、そこで流れるこの曲は、一刻の猶予も許さないシチュエーションと相まって、過激なほどに張り詰めた空気感を漂わせる。焦燥感を駆り立てるストリングスとギターの音色に、ようやく1分15秒あたりでピアノが加わると、その静けさに内包された情熱が、続いて奏でられるサビで一気に解放される。曲名の英語は直訳すれば「揺り籠のなかの土人形」だが、状況を鑑みれば単なる発音上のことば遊びに留まらぬ含意が込められたセンスあふれるネーミングとなっている。

以降も龍が如く4 伝説を継ぐもの(2010年)「5 夢、叶えし者」(2012年)「0 誓いの場所」(2015年)「6 命の詩。」(2016年)とナンバリング作品には欠かさず参加する。一方、スピンオフのクロヒョウ 龍が如く新章(2010年)「維新!」(2014年)「北斗が如く」(2018年)などにも参加し、「OF THE END」(2011年)を除くほぼすべての作品に携わることになる。また、シリーズ作品ではないものの同じく龍が如くスタジオ(第一CS研究開発部)が開発したドラマティックアクションバイナリー ドメイン(2012年)ではサウンドディレクターを務めている。

名実ともに龍が如くサウンドの生みの親として活躍するなか、以前のようにアーケードゲームの音楽を制作する機会も得る。基本プレイ無料の思考型デジタルトレーディングカードゲームコード・オブ・ジョーカー(2013年、サービス終了済み)にて、庄司氏は担当曲はすくないながらもそのシックな世界観に見合ったシャープなサウンドをつくり上げ、得意のギターで洗練された雰囲気を表現する。

www.youtube.com『Electronic Brain』(コード・オブ・ジョーカー/AC/2013年)

ゲームルールや操作方法を覚えるバトルチュートリアルで流れるのがこの曲である。チュートリアルでは基本編、応用編、実践編の三つのステップで丁寧に解説をしてくれるが、なかでも実際の戦闘場面で流れるこの曲は、そのクールなエレクトロニックサウンドで初めてのプレイヤーをぐっと底なし沼に引き込むような魅力にあふれている。歪みとエッジの効いたパワフルなエレキギターは、サビの盛り上がりで哀愁漂う泣きの旋律を奏で、集中力を高めて思考を研ぎ澄ませるとともに興奮をも増長してくれる。TCGにふさわしい冷静な昂りを備えた一曲である。

その後、龍が如くシリーズの新たな動きとして過去作のリメイク龍が如く 極」(2016年)および「極2」(2017年)が登場すると、ここでも氏は複数の作曲家とともに新曲やアレンジなどを手がける。また、主人公である桐生一馬の物語が「6」で一段落したことを受け、新プロジェクトとして始動したドラマティック抗争RPG龍が如く ONLINE」(2018年)にも携わり、変革の時を迎えつつあるシリーズに、変わらぬ良曲をもたらす。

氏にとっての直近の担当作として挙げられるのは、龍が如くスタジオが手がけたリーガルサスペンスアクション「JUDGE EYES:死神の遺言」(2018年)である。同作ではストーリー上の繋がりはないものの、龍が如くと同じ神室町を舞台にしていて、作曲家も庄司氏や福田有理氏らおなじみのメンバーが揃っている。音楽に関しては、全体的に龍が如くらしさを受け継ぎつつ、サスペンスやヒューマンドラマという点に焦点を当て、ヤクザものならではの力強さから、法廷ものならではのスタイリッシュな方向へとシフトしている。

www.youtube.com『Penumbra』(JUDGE EYES:死神の遺言/PS4/2018年)

同作のラストバトルで流れるのがこの曲である。ギターやドラム、コーラスやストリングスが一緒くたになって奏でられるメロディーは、まさにクライマックスにふさわしい威圧的で脅迫的な重苦しさに満ちている。複雑に絡み合う音色は、理性的でありながらどこか野生的な暴力をも匂わせ、激烈なシチュエーションとあわせて、突き刺すような重厚感にあふれている。曲名は天文用語で「半影(光と影の境目にある領域で、ある光源からは光に見え、別の光源からは影に見えるところ)」ないしは医学用語で「半影帯脳梗塞の治療に関連して、血流量が低下していながらも細胞死を免れている部分)」を意味し、表と裏で異なる顔を持ち、ときに治療薬を巡る人体実験に手を貸しながら、ひそかに暗躍し続けるラスボスの正体を言い表したものと思われる。

2020年には大幅な方向転換をしてコマンドRPG化するという「龍が如く7 光と闇の行方」の発売が予定されているが、いったいどんな新たなサウンドが生み出されるのか、今後の動向が注目される。

庄司氏と言えば龍が如く龍が如くと言えば庄司氏、というほど強固な知名度を誇るが、これから先、龍が如くのシリーズ作品であるにしろ、そうでないにしろ、セガゲームスサウンドクリエイターとしてさらなる活躍が期待される。

 

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選曲はできるだけ龍が如くに偏り過ぎないようにしたつもりです。参考までに、今まで格納してきた庄司さんの楽曲をどうぞ(ぜんぶ龍が如くかつラスボス戦です)。