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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#028 『時忘れの迷宮』(谷岡久美/チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮/Wii)

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スクエニがおくるダンジョンRPGチョコボの不思議なダンジョンより、

谷岡久美作曲、時忘れの迷宮の『時忘れの迷宮』。オープニングで流れます。

チョコボの不思議なダンジョンシリーズの3作目にあたる本作。忘却を美徳とし、時計塔の鐘が鳴ると記憶が消えるという時忘れの街を舞台に、トレジャーハンターのシドとチョコボは、そんないびつな幸福論に疑問を呈する少女・シロマと、彗星のごとく現れた謎の赤ん坊・ラファエロとの交流を通じ、街の人々の記憶を取り戻す迷宮へと誘われることになる。絵本のような優しいテイストのグラフィックとチョコボの愛くるしい挙動、記憶を主軸に据えた切ないシナリオが特徴である。ダンジョン攻略面ではFF譲りのジョブチェンジシステムが導入されている。緩めのゲームバランスで温かみのある世界観を楽しめる仕上がりとなっている。後にDSやスイッチ、PS4向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは谷岡久美氏。編曲のみの参加で、当時音楽制作会社ジョーダウンスタジオに所属していた高橋雄蔵氏も携わっている。このうち本作初出のオリジナル曲は数曲に留まり、それ以外のほぼすべてがFFの歴代の名曲をアレンジしたものとなっている。「ファイナルファンタジーのベスト盤」とすら評されるサウンドトラックが本作の大きな魅力の一つで、もともと優しい曲調のものはもちろん、プログレ系の激しい曲調に関しても、原曲の持ち味を生かしつつ本作に違和感なく溶け込んでいる。

オープニングで流れるのがこの曲である。手回し風のオルゴールで始まり、徐々に伸び伸びとしたクラリネットや優雅なストリングスが映えるオーケストラ主体の曲調へと変わっていく。しばらくはゆったりと哀愁漂うメロディーを紡ぐが、1分7秒頃からのサビで一気に勢いづくと、とても壮大な、それでいてやはり物悲しく感じられる独特な盛り上がりを見せる。最後には再びオルゴールの音色が入り、イントロよりも長めの尺でアウトロを彩ることで、たっぷりの余韻を残す。温かくも切ない、魔術的な優しさを秘めた一曲である。

ストーリーそのものがぜんぶこの一曲に詰まっているような印象です。