佐藤仁美作曲、サン・ムーンの『ポニの大峡谷』。同名のダンジョンで流れます。
ポケットモンスターシリーズのうち、第7作目にあたる本作。今度の舞台はハワイをモチーフとした異国情緒漂うリゾート地・アローラ地方であり、従来のシリーズにあったジム制を廃し、新たに「しまめぐり」と呼ばれる独特な儀式が導入された点が特徴である。四つの島と一つの人工島からなるアローラ地方を巡り、各地で執り行われる試練および大試練の制覇が旅の目的となっている。ヒロインに重きを置いたシナリオや、一発逆転のZワザをはじめとする対戦面における新要素など、従来とはまた一味異なる方向性を模索した意欲的な仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは足立美奈子氏、一之瀬剛氏、大賀智章氏、黒田英明氏、佐藤仁美氏、増田順一氏の五名。編曲のみの参加で福田淳氏と渡辺将也氏も参加している。このうちサウンドセクションディレクターの一之瀬氏をはじめ、足立氏、佐藤氏、増田氏はいずれもゲームフリーク所属の作曲家である(佐藤氏は現在は退社済み)。本作では島国ならではのエスニックな雰囲気を表現するべく、南国風の民族音楽、それもケチャといった特殊なコーラスを用いた楽曲が揃っている一方で、アローラで暗躍する二つの組織・スカル団とエーテル財団に関しては、前者はヒップホップ、後者はクラシカルなオーケストラを取り入れるなど、バラエティ豊かなサウンドも見受けられる。サウンドトラックについては、玩具と連動して音や光や振動が楽しめるボーナストラックも含めて4枚組で発売されている。
ポニの大峡谷で流れるのがこの曲である。伝説のポケモン・ソルガレオ/ルナアーラが祀られる祭壇の玄関口にあたる場所で、入り組んだ自然地形が印象的なアローラ最大のダンジョンである。ストーリーの佳境で訪れることになり、ヒロイン・リーリエの見せ場となるイベントもある重要な地点である。そうしたなか、ドン、と鳴る低音から始まり、散りばめられるように響くイントロや、次いで加わるギター、ノリの良いパーカッション、透明感のある笛の音が組み合わさることで、大自然の驚異と畏怖を感じさせる。ジャンルにとらわれない自由な曲調は、文化の多様性を重んじるアローラの風土をよく反映している。物語後半のダンジョンにふさわしい、荒涼としつつも冒険心をくすぐるような一曲である。
サン・ムーンはダンジョン曲が好きです。このほかにも特にラナキラマウンテンの『リーグへの道』(足立さんによる)も気に入ってます。あわせてどうぞ。