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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#054 『狂花水月』(安藤浩和/星のカービィ トリプルデラックス/3DS)

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HAL研究所がおくるアクション・星のカービィより、

安藤浩和作曲、トリプルデラックスの『狂花水月』。ラスボス戦で流れます。

星のカービィシリーズのうち、初の3DS作品として登場した本作。今度のカービィは、目覚めたら謎の蔦に覆われてしまったプププランドの危機を救うべく、その元凶である巨大な植物・ワールドツリーをのぼって浮遊大陸フロラルドへ向かうことになる。3DSのハード性能を活かした、ジャイロセンサー立体視による個性豊かなギミックが特徴で、ビッグバンすいこみという強力な新能力のほか、新たにサーカスやビートルといったコピー能力が25種類も追加された。息抜きのサブゲームやコレクション要素のキーホルダー集めも充実していて、題名通りのデラックスな仕上がりとなっている。

本作の作曲を担当するのは安藤浩和氏と石川淳氏。おなじみカービィサウンドの生みの親の両名である。シリーズ1作目から携わっている石川氏と、シリーズ2作目から携わっている安藤氏によるデラックスな音楽は、手弾き風のものから本格的なオーケストラサウンドまで、メルヘンチックであったりシリアスであったりと様々なものが揃っている。また、サウンドルームにおける音符の色により作曲者が判明するようになった(赤は石川氏、青は安藤氏)のも本作からである。サウンドトラックは完全なものは発売されていないが、クラブニンテンドー特典で厳選したものおよびボーナストラックを収録したサウンドセレクションが頒布されていた。

ラストバトルで流れるのがこの曲である。通常のボス戦である『とびだせ!奥へ手前へボスバトル』(安藤氏の作曲)のノリノリな曲調から一転、同じ旋律を使いつつ、ピアノやオーケストラ、クワイアを組み合わせることで、狂おしいほどの美しさを演出している。物憂げなピアノイントロは、通常ボス戦でも同じくピアノを用いているという点で共通しているものの、まったく別の趣を感じさせる。演出面においても、青白い満月を背景に繰り広げられる戦闘というシチュエーションで流れるにはお誂え向きで、ラスボスの姿かたちの妖艶さと相まって洗練された神秘を感じさせる。透き通るような冷涼さを漂わせつつ、ラスボス戦らしい熱さをも兼ね備えた一曲である。

当初は携帯機っぽくシンプルな音を目指して曲づくりを始めたそうですが、紆余曲折あって出来上がったのがこれ、というのは面白いですね。『とびだせ!奥へ手前へボスバトル』もあわせてどうぞ。

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