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#1653 『Mt. DeDeDe』(石川淳/星のカービィ/GB)

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HAL研究所がおくるアクション・星のカービィより、

石川淳作曲、初代の『Mt. DeDeDe』。最終面で流れます。

星のカービィシリーズの1作目にあたる本作。あきれかえるほど平和なプププランドに初めてやってきた若者・カービィは、デデデ大王に奪われた住民たちの食べ物を取り戻すべく立ち上がることになる。全5面構成のシンプルな横スクロールアクションで、作風もゲーム性もとっつきやすく丁寧なつくりが光る。本作ではまだシリーズの特徴と言えるコピー能力が登場していないが、吸い込んで吐き出す基本的なアクションと、ふわふわ飛べるホバリング動作はすでに確立されている。モノクロながらも活き活きと描かれる上質なグラフィックと、アクション初心者に配慮しつつ程よく捻りの利いたギミックやボスの攻略法などが魅力的である。本編のボリュームは小粒だが、クリア後の高難度モードやコンフィグ要素が搭載されていて、好みに合わせて楽しめる手軽さがある。総じてシリーズの原点らしく軽快かつ独創的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは石川淳氏。当時HAL研究所に所属していた作曲家で、カービィシリーズの生みの親として馴染み深い。本作を単独で手がけて以降、実に30年以上もシリーズの歩みとともに作曲に携わり続けている。ポップでチャーミングで妙に癖になる刻み方で彩られるサウンドは本作の時点で健在で、以降の作品でも本作の楽曲は繰り返しアレンジされている。サウンドトラックは本作単体では発売されていないが、シリーズの歴代楽曲を集めたものなどに本作のBGMが含まれている。

最終面「Mt. DeDeDe」で流れるのがこの曲である。山の頂上に聳え立つデデデ大王の城が舞台で、城そのものを探索することはない代わりに、広間の扉からこれまで攻略してきたステージを再現した空間を巡ってボスと再戦することになる。扉の先では各ステージのBGMが流れるし、広間に戻ってくるとボスセレクト用のBGMがかかるため、この曲が流れるのはステージ開始直後と最後のラスボス戦のときである。ステージ曲というよりは戦闘曲寄りな曲調で、冒頭で分厚い低音を鳴らしたあとは一転して素早くリズミカルに刻み続ける。歯切れよく疾走感のある主旋律の裏で高速な副旋律が巧みに寄り添うことで鮮烈な勢いを感じさせ、16秒から同じフレーズをなぞりながらも音域が上がることでますます耳に残る存在感を放つ。27秒にはすでにループに突入するが、ループ後も畳みかけるようなスピード感は維持され、短い曲のなかに色褪せないインパクトが凝縮されている。なんとも力強いガッツとスリルに満ちた一曲である。

SDX以降に後半フレーズが追加されて曲の尺が伸びたのをはじめとして例によってアレンジが豊富で、後続の作品では『デデデ大王のテーマ』と呼ばれることも多いですね。あえて一つ選ぶなら……バトルデラックスのスローアレンジはいかがでしょう? タンゴっぽくて素敵です。あわせてどうぞ。

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