弘田佳孝作曲、『狂気の神々の城II 「Star shape」』。
浮遊城ネアメートの第二階層で流れます。
作曲家としても知られる菊田裕樹氏率いるサクノスのRPG・クーデルカの精神的後継作にあたる本作。第一次世界大戦前の近現代を舞台に、モンスターの意識を取り込んでその能力を使役できるハーモニクサーの青年・ウルは、エクソシストの女性・アリスとの出会いを通じ、世界各地を旅することになる。異色な世界観と癖のあるキャラクターたちによって紡がれる、ホラーテイストでありつつもギャグ満載なシナリオが特徴で、ルーレット形式で戦闘の行動を決定するジャッジメントリングをはじめとする一風変わったシステムが採用されている。総じて斬新なセンスを持つ仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏、弘田佳孝氏、福田亮氏、光田康典氏の四名。このうち弘田氏は元サクノス所属の作曲家で、岩田氏は当時フリーランス、光田氏は音楽制作会社プロキオン・スタジオの代表、といったようにそれぞれ幅広いフィールドで活躍している精鋭揃いとなっている。なかでも弘田氏は、70曲以上にも及ぶ楽曲のうち、ゆうに50曲は作曲しているほど、本作のサウンドには欠かせない存在となっている。20世紀初頭のアジアと欧州のイメージにふさわしい、オリエンタルなものから壮大なものまで一通り揃っていて、独特な陰鬱さに包まれた世界観に見合ったダークな楽曲が多い。サウンドトラックには主題歌も含めて収録されていて、いずれの曲名も日本語の後に鉤括弧で英題が付くという独自のスタイルで統一されている。
浮遊城ネアメートの第二階層で流れるのがこの曲である。浮遊城ネアメートは本作のラストダンジョンで、第一階層の環境音主体の禍々しい曲から一転、第二階層ではメロディアスな曲調に仕上がっている。闇に溶け込む低音のピアノに、ドラムの規則的な打音、きらきらと輝く金属音、教会の鐘を彷彿させる厳かな音色が重なることで、心惹かれる退廃的な空気感を漂わせる。1分10秒あたりでコーラスを前面に押し出すと、その天にも昇る甘美な歌声によって美しくも狂気的な神秘を生み出す。身が引き締まるような畏怖を感じさせる、恐ろしさと切なさが混ざり合った一曲である。
コーラスは第一階層でもときどき唐突に響いてましたね。第一階層の『狂気の神々の城I 「Nobody knocks the door」』、あわせてどうぞ。