VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#178 『10時間くらい天井を見ている』(watson/いりす症候群!/PC)

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カタテマがおくる即死系物理パズルゲーム・いりす症候群!より、

watson作曲、『10時間くらい天井を見ている』。汎用BGMの一つ。

フリーゲームの名作として知られる魔王物語物語を制作した同人サークル・カタテマによる落ち物パズルとして登場した本作。降っては湧いてくる色とりどりのオブジェクトをぶつけ合い、同じ色同士だと消滅し、地面に接触すると情実ゲージが減少、ゲージがゼロに達するとゲームオーバー、というオーソドックスなルールだが、即死系という名には恥じないくらい、初見だとよく分からないうちにゲームオーバーになるゲーム性が特徴である。その可愛らしい作風と、すこしずつ開放される挿絵によって徐々に明かされていく衝撃的なシナリオは、延々と繰り返されるパズルと相まって、奇妙な中毒性を誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはフリーの音楽サイトMusMusを運営するwatson氏。氏は本作の他、カタテマ製の作品では後のムラサキの作曲も担当している。本作ではどこか神秘的な雰囲気に合わせて、ヒーリング風のピアノを中心とした楽曲が多く取り揃えられている。また、ゲーム中に流す曲は、タイトルロゴをクリックすることで自由に選択できる仕組みになっている。楽曲は氏のサイトからダウンロード可能となっている。

タイトルロゴをクリックして変更できる汎用BGM郡のうちの一つがこの曲である。ダウナー系のゆったりとしたピアノの音色が印象的で、どこを目指すでもなく淡々と物憂げな旋律を奏で続けることで、幾何学模様が織り成すパズルを静かに儚げに彩る。ずっと同じ調子で、ずっと同じ哀愁を帯びつつ鳴り響く鍵盤の音が、曲名と寸分違わぬメランコリックな風情を漂わせている。居心地の良い憂鬱さに満ちた一曲である。

なんというか、良い意味で退屈というか、アンニュイな曲ですね。嫌気はしないけど、もやもやと心が晴れず、惰性で聴き続けてしまうような。ゲームのコンセプトにぴったりです。