VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#298 『蝶の誘い』(椎名豪/GOD EATER 2 RAGE BURST/PS4・PSV)

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バンダイナムコがおくるドラマティック討伐アクション・ゴッドイーターより、

椎名豪作曲、2RBの『蝶の誘い』。変容の神門で流れます。

ハイスピードハンティングアクションゴッドイーターシリーズのうち、2作目の拡張版にあたる本作。人類を蝕む異形の神・アラガミと、不治の病をもたらす赤い雨の脅威にさらされる近未来を舞台に、神機使いの特殊部隊・ブラッドは人類の未来のために奮闘することになる。2のシナリオを完全収録したうえで、その後を描く新たなストーリーが追加されたほか、新アクションとして戦闘中に自身に課した誓約(捕喰を成功させる、相手を統合崩壊させるなどの縛り)を果たすことでほぼ無敵状態となるブラッドレイジが導入された。拡張版といっても新作並みのボリュームで狩りの爽快さを堪能できる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは椎名豪氏。当時バンナムに所属していた作曲家である。前作でもほぼ全曲の作曲に携わっていたシリーズサウンドの生みの親で、本作ではオープニングテーマ以外、RBの新規追加曲も含めてすべて作曲している。氏の十八番である、架空言語を用いたエスニックな作風の楽曲が数多く収録されていて、極限状態にある荒廃した世界観を見事に表現している。また、ブラッドレイジ中はボーカル入りの特殊な挿入歌に切り替わる仕組みとなっている。サウンドトラックはボーカル含め2と2RBの楽曲をまとめて収録したものが発売されている。

変容の神門で流れるのがこの曲である。螺旋の樹と呼ばれる巨大な構造物、その中位階層部に位置するステージで、辺り一面には禍々しい赤斑が見受けられる。その不気味さを象徴するかのように、イントロからスキャット風の女性ボーカル(中川奈美氏によるものと思われる)が一際特徴的に響き渡る。耳打ちするかのようなさりげなさで囁かれる歌声と、伸び伸びと歌うように奏でられるストリングス、そこにともすれば不気味な雑音にも聴こえる粗削りなノイズが加わることで、毒々しさのなかにエキゾチックな美しさが共存している。2分50秒からはエレキギターが主旋律を掻っ攫って、いっそう荒々しさが増すが、再び挿入される造語歌詞による不気味で神秘的なボイスが激しさよりも妖しさを印象付ける。一度聴いたら耳から離れない、吸い込まれるような没入感を誇る一曲である。

一発で椎名さんだ!と分かる曲を書けるのはすごいことですよね。