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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#297 『ちいさな旅立ち』(崎元仁/ブレスオブファイアV ドラゴンクォーター/PS2)

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カプコンがおくるファンタジーRPGブレスオブファイアより、

崎元仁作曲、ドラゴンクォーターの『ちいさな旅立ち』。

ニーナ関連のイベントで流れます。

ブレスオブファイアシリーズのナンバリング5作目として登場した本作。大災害により人々が地下暮らしを余儀なくされた世界を舞台に、大深度地下の下層地区を警備するレンジャーの少年・リュウは、任務先の生物実験施設での謎の少女・ニーナとの出会いを契機に、閉ざされた地底から地上を目指すことになる。従来の王道ファンタジーから一転、日の当たらない大深度地下都市を舞台とした近未来SF的な作風を採用している。ゲームオーバー時に装備やスキルを引き継いで最初からやり直すSOL(シナリオオーバーレイ)システムを前提とした歯ごたえのある難易度と、減少させる術がなくゲージが100%に達すると強制ゲームオーバーとなるD-カウンターによる過酷な縛りが特徴である。全体的にシリーズの異色作として知られるが、その分、エンディングを迎えた暁に味わえるカタルシスが魅力的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは崎元仁氏。音楽制作会社ベイシスケイプの代表を務める作曲家(ただしベイシスケイプの設立は本作の1か月前なので、制作時期的に本作はフリーランス時代の担当作と考えられる)である。氏はドラクエやFF、オウガバトルなど多くのRPGを手がけてきたが、ブレスオブファイアシリーズに関しては本作が初めての参加である。本シリーズはほぼ毎回作曲家が入れ替わっていて、その多くはカプコンお抱えのスタッフの手によるものだったが、こと本作においては外注となっている。過去作と比較してシリアスさが格段と増した本作では、それに見合ったダークな楽曲が多い。サウンドトラックはテーマ曲も含めて収録されている。

ニーナ関連のイベントで流れるのがこの曲である。過度な生体改造の犠牲となった少女で、背中に生えた翼により周囲の空気を浄化する力を持つものの、浄化は命を蝕むため、汚染された地下では長くは生きられない。彼女の存在は、リュウにとって是が非でも地上を目指す理由となるが、そうしたリュウとニーナのやりとりがおこなわれるシーンで流れる。絶望的な状況下で生きる希望を見出そうとする二人の心情を表すかのごとく奏でられるピアノの音色は、やさしく、あたたかく、ときにせつなくもある。三拍子のつまやかでしおらしい旋律は、とても耳馴染みのする穏やかな癒しをもたらす一方で、1分13秒あたりからすこし雰囲気が変わると、きゅっと胸を締め付けるような儚さを感じさせる。心地良い憂いを帯びた一曲である。

この曲名の「ちいさな」というのもそうですが、本作の楽曲はあえてひらがなにしている箇所が全体的に多いですね。