Nifflasがおくる2Dアクション・Knytt Storiesより、
Nurykabe作曲、『Arrivée Distante』。The Machineにおける緑地帯ステージの曲。
スウェーデンのフリーのゲームクリエイター・NifflasことNicklas Nygren氏の代表作であるKnyttの続編にあたる本作。Knyttという題名は、児童書のムーミンシリーズのうち、「さびしがりやのクニット(原題Vem ska trösta knyttet?)」に出てくる登場人物の名前を借りていて、その影響か本作も絵本のような幻想的なグラフィックを採用している。はじめこそできることが限られているが、ステージに散らばる強化アイテムを集めると、ハイジャンプや壁登りなどの能力を入手でき、それに応じて探索範囲が広がっていくという、シンプルながらも攻略し甲斐のあるゲーム性が特徴である。デフォルトで搭載されているマップ以外にも、いくつか追加マップが配信されていて、エディターを使えば自作マップをつくったり、他の人のつくったマップを散策できたりするなど、隅々まで遊び尽くせる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは開発者本人であるNifflas氏の他、Kevin "Gopher" Chow氏、D Fast氏、Nurykabe氏といったメンバーである。このうちNurykabe氏は本名Yann van der Cruyssenと言い、Moresqueという名義でも知られるフランス出身の作曲家である。得意ジャンルはチップチューンで、本作においては作風に合わせてアンビエントやエレクトロニカなどの楽曲も提供している。全編を通して奏でられる、のどかで柔らかなサウンドは、いずれも本作の雰囲気をとてもよく体現していて、非常に聴き心地が良い。サウンドトラックはNurykabe氏の担当曲を収録したものがデジタル配信されている。
初期状態でプレイできるThe Machineと呼ばれるマップのうち、緑に覆われた素朴な土地で流れるのがこの曲である。本作の目的は、かつて美しかった惑星を灰色の荒地に変えてしまった謎の機械を止めることだが、この曲は、そうした荒涼たる大地のなかで異質なほど豊かな自然に恵まれた緑地帯で流れるものである。静かで可愛らしい電子音が印象的なエレクトロニカで、20秒過ぎからプツプツと途切れるようなキックドラムが入ると、不思議と耳に馴染むような温もりと落ち着きを感じさせる。50秒頃で流れが変わると、ますます夢見心地に浸らせてくれるような音色を紡ぐ。荒廃した惑星とそこに芽吹くわずかばかりの草木、その対比を強く実感させるような一曲である。
曲名はフランス語で、ちょっとどう訳すのかは定かではありませんが、「arrivée」=「到着、《スポーツなどの》ゴール」/「distante」=「離れた、隔たった」だそうです。