VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#408 『わびさびテンプル』(寺田創一/サルゲッチュ/PS)

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ソニーがおくるサルつかまえアクション・サルゲッチュより、

寺田創一作曲、『わびさびテンプル』。同名のステージで流れます。

潜在能力を引き出す特殊なヘルメットをかぶったピポサルたちを捕獲していくサルゲッチュシリーズ。その第1作目にあたる本作は、世界初のデュアルショック(振動機能付きコントローラ)専用ソフトとして登場した。本作は、世界を征服し人類の歴史を改竄せんと目論むサルを追って、過去の世界を巡りながら、ときにガチャメカなる発明品を駆使しつつサルを捕まえるのが目的である。シンプルなゲーム性にバラエティ豊かなステージ、コミカルだがシリアスでもある独特な世界観が大きな魅力で、以降シリーズ化やアニメ化される人気作となった。

本作の音楽を担当するのは寺田創一氏。電子オルガンを得意とする作曲家で、日本におけるハウス・ミュージックの草創期から活躍するパイオニアでもある。ゲーム音楽方面では本作以前にレースゲームの湾岸トライアルで作曲した経験がある。本作では氏の持ち味を活かしたラウンジ系およびテクノ系の楽曲が一通り揃っていて、第1作目にしてサルゲッチュシリーズのサウンドの方向性を鮮烈に印象付けた。サウンドトラックは発売から12年の時を経て音源化され、CD版とデジタル版とで収録されているものは基本的に共通しているものの、一部アレンジを搭載したデジタル版のほうが曲数が多く、曲尺も長い。

わびさびテンプルで流れるのがこの曲である。その名の通り寺や石畳の階段、梵鐘など、和の建築が特徴的なステージである。シンセパッドの幻想的な音色、時折挿入される水滴の音、そこに渋さあふれる和楽器の旋律が加わることで、アップテンポなドラムンベースらしい仕上がりとなっている。その一方で、わびさびの心を強く刺激する閑雅な風情も感じさせる。どことなく切なく、どことなく物悲しいメロディーラインは、いつまでも聴いていられるような味わい深い響きを生む。斬新で奥ゆかしい一曲である。

この渋味のある音使いがすごく好きです。