Shin'enがおくる日本未発売の縦スクロールシューティング・Iridionより、
Manfred Linzner作曲、2の『Two Years Gone』。1-3のSpaceport Alphaで流れます。
ドイツの開発会社Shin'en MultimediaがGBA向けに制作したIridion 3Dの続編にあたる本作。前作は疑似3Dシューティングだったが、本作はオーソドックスな縦スクロールにジャンル変更している。前作で好評だった高クオリティのグラフィックをさらに強化した他、発展途上だったシステムまわりを大幅に改善し、全体的にいくらか遊びやすい仕上がりとなっている。往年の名作STGのオマージュも盛んで、惜しむらくは日本未発売という点である。
本作の音楽を担当するのはManfred Linzner氏。ドイツ出身の作曲家で、Shin'enの設立者にして同社のCEOでもある。ゲームデザインやプログラミングを担う傍ら、作曲方面ではシャープなエレクトロニックミュージックを得意としていて、初期のShin'en作品の作曲には軒並み単独で携わっている。本作では前作同様に制約の多いはずのGBA音源の能力を極限まで引き出した珠玉のレトロサウンドが揃っていて、いずれの楽曲もシューティングにふさわしい疾走感と爽快感に満ちている。サウンドトラックはオリジナル音源ではないものの、前作とあわせて人気曲を選別したアレンジ盤のPerfect Selectionが発売されている。
1-3のSpaceport Alphaで流れるのがこの曲である。最初の惑星・Alpha Galaxyの最終面で、自機の真下に絶えず回転し続ける換気扇がずらりと並べられた宇宙船基地である。初めてボスと対峙することになるステージを彩るにあたって、曲調からして古めかしい雰囲気をたっぷり漂わせている。80年代のEDMを彷彿させるヴィヴィッドな音色が限りなく郷愁を誘い、52秒あたりから始まるサビは、前向きさのなかにそこはかとない哀愁を滲ませている。休むことなく矢継ぎ早に押し寄せてくる音の波は、いかなる困難にも果敢に立ち向かわんとする心意気を感じさせる。勇ましいノリに満ちた一曲である。
Perfect Selectionのアレンジ(Linznerさんのセルフアレンジ)では、高音が耳に残りやすいシンセポップ系のサウンドに仕上がっていて、良い意味でとても古臭いです。あわせてどうぞ。