VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#468 『Garbage Day』(Daniel Koestner/Donut County/PS4・PC・iOS)

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Ben Espositoがおくる物理パズルゲーム・Donut Countyより、

Daniel Koestner作曲、『Garbage Day』。タイトル画面で流れます。

What Remains of Edith Finch(フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと)のゲームデザインを手がけたことなどで知られるインディークリエイター・Ben Espositoの新作として登場した本作。穴を操って拡大して画面上のすべてのものをゴミ同然に飲み込んでいく、という独創的かつシュールなゲーム性が特徴で、パステルカラー調の優しいグラフィックと、キュートなキャラクターたちが繰り広げるシニカルな会話のやりとりが印象的である。難易度は全体的にゆるめで、2時間ほどあればクリアできるお気軽なボリュームとなっている。本作はマルチプラットフォームで展開されていて、同時発売されたPS4版・PC版・iOS版に加え、スイッチやXboxOneなどにも移植されている。

本作の音楽を担当するのはDaniel Koestner氏。一部開発者のEsposito氏も携わっている。両名ともアメリカのカリフォルニア出身であり、このうちKoestner氏はDNYKAYやVulpixic名義でも知られる作曲家である。氏は音楽活動に励む傍ら、カリフォルニア大学にて海洋学の博士課程に進学している特殊な経歴の持ち主である。得意ジャンルはヒップホップやフォークポップで、明るく能天気な本作の作風にあわせて、夢見心地な瑞々しさにあふれる楽曲を数多く生み出している。ボーカル曲もいくつか収録されていて、コミカルさとユニークさに満ちた本作独自の世界観を静かに楽しく彩ってくれる。サウンドトラックにはボーナストラックも含めて全曲収録されている。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。ウクレレと思しき音色を軸とした柔らかく瑞々しいメロディーが印象的で、後ろでチッチッとゼンマイを巻くような音が鳴ることで、不思議と心地良いリズム感を生み出している。わずかにメランコリックな響きを帯びた牧歌的な曲調が、動物たちやドーナツが織り成す可愛らしいビジュアルにふさわしい長閑な雰囲気を醸している。1分47秒で気の抜けたような高音が入るなどの変化はあるが、基本的には同じフレーズを懲りずに繰り返していて、変わり映えしないからこそ、これからもずっと続いていく日常の面白おかしな魅力を余すことなく描き出している。陽気なリズムと素朴な哀愁が綯い交ぜになった一曲である。

曲名はずばり「ゴミの日」という意味ですが、それがまたとても本作らしいですね。