近藤浩治作曲、『ピーチのお城』。ピーチ城で流れます。
マリオシリーズのうち、64のローンチタイトルとして登場した本作。クッパの陰謀により平和を脅かされたキノコ王国にて、奪われたパワースターを取り戻すべく、今度のマリオは絵のなかの世界を探索することになる。シリーズ初の本格的なフル3Dアクションとなっていて、ハードの進化をまざまざと見せつけるかのような圧倒的な完成度が魅力である。陽気なボイスとともにフィールドを駆け巡る箱庭マリオの面白さが極限まで追求されていて、その見事なまでの自由度の高さが、本作以降の3Dアクション全般に決定的かつ革新的な影響を与えることとなった。後にいろいろとテコ入れをしてDS向けにリメイクされた。
本作の音楽を担当するのは近藤浩治氏。おなじみマリオシリーズのサウンドを初代から手がけている任天堂所属の作曲家である。本作では今までにないほど音楽が充実しているのが大きな特徴で、スーファミから64へ、2Dから3Dへ、新たな次元へと飛躍的な進化を遂げたことをはっきりと印象付けてくれるような多彩な楽曲が揃っている。また、マリオが水のなかに入ったり、ステージの奥に進んだりすることでメロディーや楽器構成が変化するというようなインタラクティブな仕掛けも用意されていて、総じて遊び心あふれる仕上がりとなっている。サウンドトラックは任天堂の作品としては初めてサウンドスタッフが直接CD製作に携わっていて、音楽に対する深いこだわりが窺える。
キノコ王国の象徴とも言うべきピーチ城(キノコ城とも)は、本作では絵画の世界に入り込むための拠点としての役割もある、まさに冒険の中心地であるが、そこで流れるのがこの曲である。いかにも王室らしいムードを漂わせた、弦楽アンサンブルによる優雅で上品な音使いが印象的で、そのエレガントなメロディーラインは、聴く者を優しく抱擁するような包容力に満ちている。弦を指ではじいて演奏するピチカートと、音を切らずに滑らかに演奏するスラーの両方を効果的に用いることで、軽やかであり、しなやかでもある雰囲気をつくり出している。皆に愛されるピーチ姫のお城にふさわしい一曲である。
ゲームの面白さ、奥深さとともに、いつまでも記憶に残り続けている一曲です。マリオオデッセイでは藤井志帆さんのアレンジが収録されていて、ものすごく正統派な室内楽に仕上がっています。あわせてどうぞ。