工藤吉三作曲、『「敵は手練の集団です」』。
VERSUSクエストの戦闘曲として流れます。
ヴァニラウェアのグランナイツヒストリーを手がけたスタッフが独立・再集結して開発された本作。四つの国が覇権を争うリゾネール大陸を舞台に、主人公は傭兵団を率いて戦場を駆ることになる。大陸の謎に迫るシングルプレイのメインストーリーは用意されているが、オフラインよりもオンラインに重きを置いたゲームデザインとなっていて、クエストを受注したり戦争に参加したりして傭兵団の戦果を挙げていく。戦闘システムはユニットやギミックの配置が鍵を握る戦術性あふれるものとなっていて、コンボの繋げ方や陣形、技の組み合わせなど、アクション要素も強い。総じてグランナイツヒストリーらしさを継いだ仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏、金田充弘氏、工藤吉三氏、千葉梓氏、東原一輝氏。現在も在籍している金田氏を除き、いずれも当時、音楽制作会社ベイシスケイプに所属していた作曲家である。このうち岩田氏、金田氏、工藤氏はグランナイツヒストリーでも作曲していて、本作でもその作風を正統に継承したバラエティ豊かなシンフォニックサウンドは健在である。騎士をテーマにしていたグランナイツヒストリーとは違い、本作では傭兵をテーマにしていることから、王道をすこし外れて臨機応変に流離うケルト風味の濃厚な曲調が目立つ。また、曲名が鉤括弧込みの台詞で統一されている点も特徴的である。サウンドトラックはたっぷり3枚組のボリュームで発売されている。
オフラインで受注するクエストのうち、VERSUSクエストは、サーバー上から他のプレイヤーの部隊情報をダウンロードして疑似的な対抗戦をおこなうフリークエストの一種である。魔物討伐や物資回収など、どちらが先に与えられた任務を達成するかを競い合うことになるが、その際の戦闘曲として流れるのがこの曲である。畳みかけるような勢いで展開する血気盛んな管弦楽器の音色が印象的な一曲で、要所要所にアコーディオンかバンドネオンのようなリード音やカスタネットと思しき細かな打音などが加わることで、民族音楽特有の躍動感を見事に演出している。その息もつかせぬ迫力に満ちた音使いは、たとえ相手がどれほど手練の集団であろうと、ライバルには決して負けまいという強い意志と矜持とを滲ませていて、白熱の対抗戦を鮮やかに盛り上げてくれる。