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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#607 『かぜのさかなのうた』(濱野美奈子/ゼルダの伝説 夢をみる島/GB)

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任天堂がおくるアクションアドベンチャーゼルダの伝説より、

濱野美奈子作曲、夢をみる島の『かぜのさかなのうた』。

マリンが口ずさむ、物語の鍵を握る重要な曲。

ゼルダの伝説シリーズのうち、初の携帯機向けの作品としてゲームボーイに登場した本作。嵐で漂着した絶海の孤島・コホリント島を舞台に、今度のリンクは島から脱出すべく、山の頂上にある巨大なタマゴのなかに眠る神の化身たるかぜのさかなを目覚めさせることになる。目覚めさせるためには各地のダンジョンに散らばるセイレーンの楽器を集め、タマゴの前でめざめのうたを奏でることになるが、徐々に明かされるコホリント島の秘密と住民たちの願いが、シリーズのなかでもどこか異質な物語を紡いでいく。後にゲームボーイカラー向けにDXが登場したほか、スイッチにもリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは石川こずえ氏、戸高一生氏、濱野美奈子氏の三名。いずれも任天堂所属の作曲家で、石川氏と濱野氏はともに本作がデビュー作で、ゼルダシリーズの作曲に携わったのは今のところ本作が最初で最後である。また、GBC版の追加曲は尾崎裕一氏が、スイッチ版の作編曲は永松亮氏がそれぞれ担当している。本作の南国風で幻想的な作風にあわせて、いつものゼルダらしい勇ましさに、独特な儚さを兼ね備えた楽曲が揃っていて、ゲームボーイ特有の柔らかな電子音がうまく活かされている。サウンドトラックはスイッチ版にあわせてオリジナルとリメイク音源の両方が収録されたものが発売されている。

作中、ゼルダによく似た少女・マリンがリンクに歌って聴かせるのがこの曲である。島の神であるかぜのさかなを目覚めさせるために必要な歌で、楽器を集めてタマゴの前で演奏するたびに、楽器の数に応じて新たなパートが追加されていく。この曲は、そうした遊び心を重視しつつ、胸を締め付けるような不思議な切なさを内包している。高音で奏でられる穏やかな旋律は、非常に質素で慎ましげな雰囲気を漂わせていて、夢見心地な優しさにあふれている。ゲームボーイだから歌詞はついていないが、それゆえ想像力を刺激するような豊かな余韻を残してくれる。

スイッチ版発売記念に(※記事執筆時)。作中未収録ですが、公式でイメージソング用にボーカルがつけられたようですね。ちなみに楽器2つ~8つのパターンをまとめた音源もあったので、あわせてどうぞ。

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※追記 サウンドトラックの発売を受けて、作曲者の情報など一部加筆修正しました。また、記事執筆当時は発売日当日だったので紹介できませんでしたが、その後しばらく経過したので、スイッチ版のアレンジ、2つ~8つの聴き比べもあわせてお聴きください。

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