栗山和樹作曲、IXの『夏・小勢力』。
季節が夏で、自軍の勢力が小規模なときの戦略フェイズに流れます。
三国時代の激動期を生き抜いて中国統一を目指す三國志シリーズのうち、ナンバリング9作目として登場した本作。シリーズ初となる1枚マップが採用され、中国全土で巻き起こる壮大な覇権争いの舞台を一望できるようになった。武将プレイから君主プレイに回帰していて、戦略フェイズで出した指示(内政・外交・移動・出陣など)を、進行フェイズで武将たちが実行していく。遠方に出向く際は距離に応じた日数を要し、敵軍の動きを先読みしながら慎重に進める必要があるなど、より現実感のある戦争の駆け引きを味わうことができる。後にPS2やPSPに移植されたほか、追加要素を加えたパワーアップキットも登場した。
本作の音楽を担当するのは栗山和樹氏。大河ドラマや時代劇などの劇伴作曲で活躍している作曲家である。氏がゲーム音楽を担当するのは今のところ本作が最初で最後である。本作の楽曲もシリーズの例に漏れず、歴史の重みを表現した壮大な曲調のものが多く、派手さよりもしっとりとした作風を重視した、伝統的な生楽器を用いたオーケストラサウンドが揃っている。サウンドトラックは本作単体では未発売だが、他のシリーズ作品とともに30周年記念の三國志歴代サウンドトラックCDに楽曲が収録されている。
戦略フェイズのうち、季節が夏(4月・5月・6月)で自軍の勢力が小さい(官爵が大司馬以下である)ときに流れるのがこの曲である。ホトトギスのさえずりを思わせる笛の音から始まり、続いて二胡のゆったりとした旋律が加わることで、落ち着いた気品に満ちた曲調に仕上がっている。周期的に拍を刻む打楽器が、思考力を研ぎ澄ませてじっくりと戦略を練るシチュエーションを静かに彩り、主張が激しい曲ではないものの不思議と耳に残るような余韻をもたらしてくれる。こぢんまりとしつつも底知れぬ野心を感じさせる一曲である。
大勢力になると、相変わらず中華アンビエント的な雰囲気ですが、どこか威圧的な色合いを帯びて渋みに磨きがかかります。『夏・大勢力』、あわせてどうぞ。