吉冨亮二作曲、アドバンスの『Hurry Up!』（仮称）。
ステージから脱出するためのカエルのスイッチを踏むと流れます。
ワリオランドシリーズのGBA進出作にあたる本作。新聞で伝説の黄金ピラミッドの記事を読んだワリオは、お宝をいただくべく金の亡者・ヨーキに乗っ取られた遺跡に挑むことになる。残機無限でライフ制のステージクリア型2Dアクションで、ビビッドなグラフィックと強烈なキャラクターたちが特徴である。各ステージはスタートとゴール地点が同じで、脱出するにはどこかにあるカエルのスイッチを踏む必要がある。スイッチを踏むと同時に時限爆弾のカウントダウンが始まり、制限時間内に脱出できなければコインをどんどん奪われ、コインが底を尽きると最初からやり直さなければならなくなる。また、特定の攻撃を喰らうなどして発動するリアクションという受動的な変身要素も健在で、先に進むには変身中の能力も適宜用いることになるため、ときにはワリオを痛い目に遭わせることが攻略の鍵となる。ステージ数はすくなめだが、シリーズ初の難易度選択制を採用しているなど、適度にスリルのある上質なアクションを楽しめる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは吉冨亮二氏。任天堂に所属する作曲家である。ワリオランドシリーズには1作目で作曲して以来の参加である。また、後に登場するメイドインワリオでも作曲している。本作ではジャズやファンクを中心とした楽曲のほか、声のみならずしっかり唄が入ったボーカル曲も収録されている。また、作中にあるサウンドルームが混沌としていることでも知られていて、前衛音楽を思わせる本編未使用の謎の楽曲群を試聴できる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
カエルのスイッチを踏むと流れ出すのがこの曲である。前述の通り、制限時間内での脱出を余儀なくされるシチュエーションを彩るにあたって、"Hurry up!"（急げ！）というワリオの掛け声とともに時鐘や針音が不気味に響き合う。8秒頃から勢いを増し、ガバのような独特な歪みの効いた曲調へ移り変わると、画面上部に表示されるカウントダウンとあわせて並々ならぬプレッシャーを感じさせる。しばらくはパーカッション主体で曲が展開するが、47秒で毛色の異なる音色が入ると、それを機に徐々に流れが変わる。1分18秒でようやく主旋律が始動すると、その高速で複雑な電子音がますます焦燥感を煽る。特に1分47秒以降はそわそわとざわめく伴奏が目立つようになり、切羽詰まった空気感を強く印象付ける。一方で、時折ふと1分58秒や2分21秒などのように静かな音色がポロンと奏でられることで、忙しいなかでもうまくメリハリをつけている。なお、上記動画の3分11秒以後は制限時間を過ぎてコインを奪われる際に流れるもので、3分34秒以後はコインが尽きてミスになった際のものである。急かされる状況下での不安な心情や不吉な予感を見事に表現した一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。スイッチを踏むとステージ構造が変化したりするので余計に焦るんですよね。
