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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#135 『ジャッジメント』(いとうけいすけ/銃声とダイヤモンド/PSP)

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SCEがおくる交渉アドベンチャーノベル・銃声とダイヤモンドより、

いとうけいすけ作曲、『ジャッジメント』。交渉の大詰めで流れます。

弟切草かまいたちの夜などに携わり、サウンドノベルというジャンルを開拓した麻野一哉氏がシナリオ監修と演出を務めた本作。近未来の東京を舞台に、凶悪犯罪への対抗手段として設立された警察庁交渉準備室、通称ゼロ課に所属する主人公・鬼塚は、陰謀渦巻く様々な怪事件に挑むことになる。リアルタイムで進行する緊張感のある交渉と、それを彩る味のあるグラフィックと印象的な演出、本格的な刑事ものさながらの怒涛のシナリオが特徴である。交渉シーンでは単に会話を交わすだけではなく、ときに会話を遮ったり、あえて相手の発言を無視したりしながら、手に汗握る駆け引きを繰り広げていく。ディープでスリリングな魅力に満ちた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはいとうけいすけ氏。音楽制作会社ノイジークロークに所属する作曲家で、本作で氏は交渉という一風変わったテーマに合わせてすべての曲を単独で作曲した。氏の掲げる基本的なスタンスである「映像と音楽のリンク」に重点を置いた楽曲は、どれも張り詰めた空気感が漂う本作のゲーム性にマッチした良曲揃いとなっていて、バンドネオンを主軸に据えた、一癖も二癖もあるタンゴ調のリズムが、交渉を大いに盛り上げてくれる。サウンドトラックはブックレットにて氏のコメント付きで全曲収録されている。

交渉もいよいよ佳境を迎え、クライマックスに差し掛かったところで流れ出すのがこの曲である。勢いのあるバイオリンから始まり、ピアノとバンドネオンの短音が醸す張り詰めた空気感のなかを踊るような軽快さで走り抜ける。それを追うようにバンドネオンのソロパートが加わると、今度はバイオリンが細かく切り刻まれた短音を高速で奏で、息もつかせぬ昂揚感を演出する。その旋律は、じりじりと長引く交渉の鬱憤を晴らすような豪快な解放感に満ちていて、激しさのなかに確かなカタルシスを感じさせる。非常に洗練された鮮烈な一曲である。

メインテーマの『銃声とダイヤモンド』のメロディーを取り入れているあたり、いかにも大詰めって感じですね。参考までにどうぞ。

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