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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#848 『悠遠』(朝倉紀行/立体忍者活劇 天誅/PS)

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アクワイアがおくる忍者アクション・天誅より、

朝倉紀行作曲、『悠遠』。エンディングで流れます。

忍びの暗躍を描く天誅シリーズのうち、記念すべき第1作にあたる本作。戦国時代、人情で領民に尽くす大名・郷田松之助を影から支える東忍流の忍び・力丸と彩女は、平穏を乱す不埒な輩を相手に、人知れず悪を誅することになる。物陰に隠れ、息を潜めて忍び寄り、隙をついて敵を一撃で葬り去る、スリリングな忍殺アクションが特徴で、手裏剣や撒きびし、壁や屋根を登ることができる鉤縄など、多彩な忍具を活用して攻略していく。忍びの生き様を描いたダークな世界観に、高い自由度と緊張感に満ちたゲーム性とが相まって、和風ステルスゲームの傑作と名高い仕上がりとなっている。後に追加要素を加えた忍凱旋が発売された。

本作の音楽を担当するのは朝倉紀行氏。アニメやゲームの音楽を幅広く手がける作曲家で、特に本作および本シリーズは氏の代表作である。本作では和の世界観にあわせつつも、和だけにとどまらず、トルコやタイ、中国の民族音楽をも取り入れたワールドワイドなオリエンタルサウンドが揃っている。楽曲は生演奏にこだわっているほか、主題歌は日本語ではなく西アフリカのハウサ語で歌われているなど、意欲的な姿勢が窺える。サウンドトラックは本編未使用のオリジナル組曲も含まれる一方で、未収録曲もすくなくない。

エンディングにて、ラストのムービーからスタッフロールにかけて流れるのがこの曲である。遠くのほうからぼんやりと歌声が響き、そのまましばらく、大きな変化もなく揺蕩い続けるが、40秒でようやく太鼓が入ると、50秒には一気にメインメロディーへと突入する。伸び伸びとしながらも憂いを溜め込んだバイオリンの旋律に、ピアノとギターの小洒落た伴奏が付き添い、1分30秒頃になると何事かをつぶやく野太いボイスが挿入される。雷鳴を思わせる効果音も混ざり、心がざわつくような、それと同時にピアノの美しさに心底聴き惚れるような不思議な感覚を生み出し、バイオリンのサビとボイスの間奏とを繰り返して力強く曲が展開していく。3分20秒からは新たなフレーズを追加して最後のサビへのムードを駆り立て、4分から始まるラストスパートでは、いっそうバイオリンが軽やかな音の跳躍を見せる。闇に生き、闇に消えた忍びの生き様をドラマチックに表現した一曲である。

エンディングの余韻に浸るのにお誂え向きな、物語の終わりを感じさせつつ、やっぱりまだ終わっていない感じもする、矛盾した調和があるような、そんな印象です。