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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1307 『此岸 -吹きあがる風-』(朝倉紀行/サムライウエスタン 活劇侍道/PS2)

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アクワイアがおくる刀vs銃アクション・サムライウエスタンより、

朝倉紀行作曲、『此岸 -吹きあがる風-』。リザルト画面で流れます。

侍の生き様を描く侍道シリーズのスピンオフにあたる本作。19世紀のアメリカ西部を舞台に、東洋のサムライ・豪次郎は、剣を捨てて渡米した兄を追うべく、得物の刀で荒くれ者たちを斬り伏せつつ彼の行方と真意を探ることになる。従来の自由度高めのアクションアドベンチャー形式から、本作ではステージクリア型で一本道のアクションゲームに変更されている。刀で銃弾を弾く、弾くのみならず打ち返して射手を絶命させる、神速の身躱しで間合いを詰める、戦いを通じて溜まる達人ゲージを解放して銃より速い早業で連続斬りを決めるなど、西部劇の世界観にあって滅法に刀強しなアクションを楽しむことができる。2P協力プレイに対応しているほか、通常の遊び方に加えて俺ルールというシステムを通じて自分好みに制限時間や行動制限を設けてステージ攻略に挑むことも可能である。敵の配置や出現の仕組みが厄介だったり不自然だったり、カメラワークが荒かったりといった大味な部分は散見されるが、コンセプト通り時代劇×西部劇の双方の魅力が詰まった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは朝倉紀行氏。音楽制作会社メガアルファの代表を務める作曲家である。侍道シリーズはもちろん、同じく和風でアクワイア製の天誅シリーズでの作曲経験もあり、シリーズサウンドの生みの親として馴染み深い。侍道シリーズの音楽は、これまでも和を念頭に置きつつ必ずしも和に囚われない無国籍感のあるサウンドを追求してきたが、本作ではさらにそこに西部劇というテーマが加わったことで、ますます型にはまらない雰囲気が強まった。西部劇といって連想する口笛やアコースティックギター口琴に、時代劇といって連想する尺八などの和楽器、その他コーラスやエレキギター、南米由来のケーナなど、何やらいろいろと混ざった楽曲群を堪能することができる。サウンドトラックには主題歌やボーナストラックも含めて収録されている。

リザルト画面で流れるのがこの曲である。この画面はステージをクリアするたびに表示され、タイム・キル数・コンボ数などとともにスコアが算出された後、経験値や装備品等を得られる。攻略の合間のちょっとした休憩時間を彩るにあたって、曲冒頭からすごく快い響きを帯びたギターが奏でられ、ステージをクリアした達成感と安心感を強く印象付ける。10秒頃からはテルミンに似た脱力感のある音色が加わり、それが響き終わるのと入れ替わりで19秒からはいっそう陽気なマンドリンが掻き鳴らされる。以降もしばらくこれらの音色が交互に響いてブルーグラス風の曲調を貫くが、47秒頃からすこし流れが変わると、アウトロに向けてマンドリンが徐々に勢いを強めていく。そして曲終盤の1分2秒にはバンジョーが満を持して参戦し、手短に綺麗に締める。粋な一曲である。

「此岸」という曲名は代々このシリーズではOP曲に用いられるものですが、使用場面含めだいぶ本作のは毛色が違う感じですね。初代の『此岸』、2の『此岸 -邂逅の地-』もあわせてどうぞ。

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