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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1308 『杉並の旧街道』(すぎやまこういち/不思議のダンジョン2 風来のシレン/SFC)

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チュンソフトがおくるダンジョンRPG風来のシレンより、

すぎやまこういち作曲、『杉並の旧街道』。同名のダンジョンで流れます。

トルネコの大冒険に続く不思議のダンジョン作品群の第2弾にして、風来のシレンシリーズの1作目にあたる本作。風来人のシレンとイタチの相棒・コッパは、黄金のコンドルが棲む幻の黄金郷があると伝わるテーブルマウンテンの頂上を目指して冒険することになる。前作はドラゴンクエストの世界観を借りたローグライク形式のダンジョンRPGだったが、本作では世界観を和のテイストを取り入れたオリジナルのものへと一新し、システム面の追加や強化を図って独自路線を開拓している。基本的なゲーム性は前作を踏襲しているが、新たにダンジョン内に売買や盗みが可能な店が登場した点、個性豊かなNPCを同伴させて一緒に冒険できるようになった点、武具の合成が導入された点など、後のシリーズのスタンダードとなる要素が数多く加わった。ゲームバランスは良くも悪くも尖っていて、それゆえ苦戦することもあれば意外な突破口を見つけられることもあり、長く遊ぶに足る面白さを確立している。クリア後のやり込み要素も充実していて、前作から独立した新シリーズの幕開けにふさわしい革新的な仕上がりとなっている。後にDS向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは故・すぎやまこういち氏。ゲーム方面ではドラクエの作曲家として馴染み深く、ドラクエ関連作品だった前作を手がけたのに続いて、本作でも単独で作曲を担当した。本作以降も主に初期の風来のシレンシリーズにおいて作曲を手がけていた。本作のサウンドは、和のイメージを尊重しつつ、気品のあるストリングスを中心としたオーケストラ系の音色をうまく組み合わせていて、絶妙に冒険心をそそる楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックについては、シンセやオーケストラアレンジを施したスペシャル・アレンジヴァージョンというものが発売されている。

杉並の旧街道で流れるのがこの曲である。開始直後に訪れる最初のダンジョンで、名前が示す通り鬱蒼と茂る杉並木の景観が特徴である。フルートの瑞々しく歯切れの良い旋律に、弦を指ではじくピチカート奏法による、これまた瑞々しく歯切れの良い伴奏を絡み合わせることで、自然と心が弾むような親しみやすい印象を与える。高音を中心に展開する主旋律の傍らに、5~8秒や14~17秒などで時折クラリネットの円熟した低音を添えることで、親しみやすさのなかに翳のある響きを融け込ませている。特に28秒以降でピチカートの勢いが抑えられると、親しみやすさより寂寥感が強調される。36~43秒では、ピチカートから通常の弓での奏法に切り替えて滑らかな音色を披露して物悲しい雰囲気を漂わせる。かと思いきや、すぐに46~48秒でみられるような底抜けに元気な高音を響かせて明るさを取り戻すなど、しっかり曲の流れにメリハリをつけている。その後は1分過ぎから繰り返しに入り、よく似ているものの主旋律を尺八に置き換えているといった趣向を凝らしている。実際にループへ突入するのは2分3秒となる。最序盤のダンジョンといえどピクニック気分ではなく危険を伴う冒険なのだと実感させてくれる明るくも手強い一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。シレン2の64音源、それからスペシャル・アレンジヴァージョンのシンセアレンジなど各種ありますので、聴き比べてみてください。

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