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#1279 『ルーセ離宮』(松岡純也/ダンジョントラベラーズ2-2 闇堕ちの乙女とはじまりの書/PSV)

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アクアプラスがおくる3DダンジョンRPGダンジョントラベラーズより、

松岡純也作曲、2-2の『ルーセ離宮』。離宮庭園とルーセ離宮で流れます。

Leafの恋愛ビジュアルノベルToHeart2のスピンオフとして当初登場し、2作目以降は独立した世界観で展開するようになったダンジョントラベラーズシリーズの第3弾にあたる本作。前作の最終決戦で主人公の青年・フリード率いるロムレア王立図書館討伐隊が敗れた世界を舞台に、記憶を失って少年の姿になったフリードは、マモノの手に堕ちたロムレアを奪還すべく再び冒険を繰り広げることになる。前作のifから続く内容を描いている点が特徴で、主人公や前作ヒロインたちは軒並み闇堕ちして性格やビジュアルが変貌している。基本的なゲーム性は前作同様、お色気とハクスラ要素を含みつつ、難易度的には本格派な3DダンジョンRPGで、新要素として自動で共闘してくれる傭兵バディと召喚マモノが追加されたことでパーティ枠が広がった。また、クラスに関係なく外見を変えられる着替え屋が導入されたほか、細々とした仕様や手触りが調整された。続編というより焼き直しに近い内容で、相変わらずニッチながら骨太な遊び心地を得られる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは石川真也氏、故・衣笠道雄氏、松岡純也氏。いずれもアクアプラス所属の作曲家で、三名ともダンジョントラベラーズシリーズはもちろん、大元のToHeartシリーズでも作曲経験がある。過去作からの流用曲もすくなくないなかで、戦闘曲はエレキギターを中心に熱くメロディアスなものが、ダンジョン曲はシンセを中心に雰囲気に見合った好奇心をそそるものが用意されている。サウンドトラックはボーカル曲も含めて2枚組で収録されている。

離宮庭園とルーセ離宮で流れるのがこの曲である。物語中盤のダンジョンで、前作にも同名の場所が登場するが、本作ではより早い段階で訪れることになる。王室ゆかりの宮殿で、丁寧に刈り込まれた庭園には薔薇が咲き、離宮内部には優雅な装飾が施されている。そうした気品あふれる空間を表現するにあたって、鐘の音と無機的なビートが巧みに絡み合う象徴的なイントロで始まる。8秒頃からチェレスタと思しき音色の旋律が入ると、その柔らかく澄んだ響きが神秘を誘う。繰り返しが多く、微睡を催すような魔術的な聴き心地を持つ一方で、背後では不穏な効果音が鳴り続け、40秒頃から始まる間奏ではあえて微妙に拍を外した不規則な調べを奏でるなど、絶えず妖しい空気感を醸している。サビと呼べるほど目立った変化をみせるわけではないが、1分12秒からはいっそう面妖な印象を強め、フレーズ終わりの1分28秒以降はしきりに鐘を鳴らしてループに至るまでの間を余韻たっぷりに彩る。聴いていると思わず催眠にかかりそうな、吸い寄せられるような魅力に満ちた一曲である。

個人的に音楽を聴いていると、まれに香りがする気がする曲があるのですが、この曲はそれに当てはまります。松脂のようなツンと来る感じです。