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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1280 『Traffic (Select)』(古川典裕/電車でGO!/AC)

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タイトーがおくる電車運転士体験ゲーム・電車でGO!より、

古川典裕作曲、初代の『Traffic (Select)』。路線選択画面で流れます。

タイトーの看板作品の一つである電車でGO!シリーズの第1弾にあたる本作。プレイヤーは電車の運転士となり、4路線+隠し2路線から選択してダイヤに沿って運転することになる。筐体はマスコンやブレーキ、警笛ペダル、各種計測器類が取り付けられた運転台を模していて、出発から終着までの区間で、いかに時間や停車位置を守りながら適切に操作を入力するかが重要である。難易度は初級1路線(山陰本線)と上級3路線(京浜東北線東海道本線・山手線内回り)に分かれていて、特定の操作で上級用の隠しダイヤ2路線も選択できる仕組みである。運転速度の見極め、秒単位での時間厳守、信号や標識への対処など、単純に電車を走らせるだけに留まらぬリアル志向の要素が多く搭載されていて、高評価でのクリアを目指すには熟練を要する。職業体験モノとしての面白さと難しさをよく捉えた仕上がりとなっている。後にPS、PC、ワンダースワンゲームボーイカラー向けに移植された。

本作の音楽を担当するのは古川典裕氏。当時タイトーサウンドチーム・ZUNTATAに所属していた作曲家である。電車でGO!シリーズには次作でも作曲することになるなど、主にシリーズ初期において音楽を手がけていた。本作では運転中は走行音やアナウンスなどで構成されるため、プレイの大部分は目立ったBGMが流れないが、代わりに各種ジングルなどの短くアイコニックなサウンドがいくつか用意されている。また、BGMが流れる場面(タイトルデモ、路線選択、エンディングなど)ではシンセ系の味のある楽曲を楽しむことができる。これらの楽曲やジングルは後の作品でも連綿と受け継がれることになる。サウンドトラックについては、稼働時期が近いサイドバイサイド2との抱き合わせで収録されていて、ボーナストラックとして一部アレンジやライブ音源なども含まれる。

路線選択画面で流れるのがこの曲である。ふんわり揺蕩うように響くシンセパッドに、高く澄んだ金属音を鳴らすトライアングル、7秒頃から鮮やかに散りばめられるピアノなどが重なり合い、チルアウト然とした陽気でリラックス感のある聴き心地を生み出す。16秒から入る音色は、鍵盤ハーモニカを彷彿させるような朗らかで豊かな響きがあり、23秒からはピアノが主旋律を、さらに30秒からはシンセリード系の音色が主旋律を担うことで、落ち着きのある曲調のなかでも時々刻々と移り変わる感覚を味わえる。主旋律を支えるパーカッションパートに関しては、トライアングルやハイハット、スネアドラムなどに加えて、定期的にハンドクラップが挿入される点が、曲全体にうまく興を添えている。出発進行する前段階、これから始まる列車の旅を全力で楽しもうとする意気込みが感じられる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。以降のシリーズでも長く使われているBGMで、明るく聴きやすい曲なのでアレンジの聴き比べも楽しいです。あわせてどうぞ。

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