VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#001 『10番道路』(景山将太/ポケットモンスター ブラック・ホワイト/NDS)

www.youtube.com

第一曲目は、ゲームフリークがおくるRPGポケットモンスターより、

景山将太作曲、ブラック・ホワイトの『10番道路』。同名のマップで流れます。

ポケモンシリーズのうち、本編の第5世代として登場した本作。イッシュ地方を舞台に、150種類を超える新たなポケモンたちとともに冒険を繰り広げていくことになる。シナリオクリアまで既存ポケモンが一切登場せず、ストーリーもポケモン人間性の在り方を問うシリアス寄りな作風になるなど、従来の路線とは異なる斬新さが目立つ。戦闘面ではワイヤレス通信を使って手軽に世界中のプレイヤーとオンライン対戦が可能になったほか、トリプルバトルなどの新ルールが追加され、わざマシンの仕様が使い切りから使用無制限に変更されるなど、意欲的な要素も多い。総じて心機一転の改革に乗り出した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは足立美奈子氏、一之瀬剛氏、景山将太氏、佐藤仁美氏、増田順一氏の五名。いずれも当時ゲームフリークに所属していたか現在も所属している作曲家である。このうち足立氏は本作がシリーズ初参加、景山氏も(本作以前にHGSSの編曲を担当したが)本編シリーズで初めて作曲している。イッシュ地方のモチーフがアメリカということもあって、本作ではワールドミュージックを取り入れるなど、既存のシリーズサウンドの方向性にとらわれない自由で多彩な楽曲が揃っている。サウンドトラックは短いジングルやボーナストラックとしてのアレンジも含めて収録されている。

物語終盤、チャンピオンロードへと続く最後の道である10番道路で流れるのがこの曲である。手前に位置するソウリュウシティの、ブラック版ならポストモダンな、ホワイト版ならノスタルジックな曲(どちらも一之瀬氏による作曲)から、ゲートを越えて一転、この曲はソウリュウの哀愁を引き続き漂わせつつもドラマチックに展開していく。冒頭でシリアスな雰囲気を整えた後、7秒頃からアコーディオンを思わせる音色の主旋律が流れ始め、切なくも力強い調べを奏でる。20頃から笛にバトンタッチすると、ますます寂寥感を帯びていく。サビとなる34秒以降はアコーディオンが復帰し、すこし華やかに、それでいてやはり哀愁を纏った旋律を紡ぐ。48秒頃になると笛も一緒にメロディーをなぞって、勇ましいのに今にも張り裂けそうな極上の悲壮感を生む。いよいよ冒険の終わりが近付きつつある状況をひたすら叙情的に表現した一曲である。

個人的には、ここでライバル戦を挑んでくるチェレンの心境を表しているような気がします。『ソウリュウシティ』との相乗効果があってこそ映えると思うので、両バージョンを聴き比べてご堪能ください。

www.youtube.com

www.youtube.com

thytimes.hatenablog.com