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#026 『meaning of birth』(藤原基央/テイルズ オブ ジ アビス/PS2)

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ナムコがおくる生まれた意味を知るRPGテイルズオブジアビスより、

藤原基央作曲、『meaning of birth』。終盤のアッシュとの一騎打ちで流れます。

テイルズシリーズのうち、10周年目の節目につくられた本作。何もかもが預言で決定づけられる世界を舞台に、過去に誘拐されたのが原因で幼少期の記憶を持たない貴族の青年・ルークは、仲間たちとの出会いを経て自らの生まれた意味を知ることとなる。癖の強いキャラクターが織り成す、人造クローンと存在意義を題材とした重厚なシナリオが特徴で、特に主人公の性格描写や成長する過程に大きく焦点を当てている。また、戦闘中にフィールドを自由に移動できるフリーランシステムがシリーズで初めて導入されたのも本作で、アクション性が増したことでより活き活きと戦えるようになった。グラフィックやその他システム面の進化も相まって、挑戦的な仕上がりとなっている。後に3DS向けにリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏、田村信二氏、藤原基央氏の三名。一部のミニゲームでは往年のアーケード作品・ドラゴンバスターより慶野由利子氏が手がけたBGMが用いられている。このうち桜庭氏と田村氏はシリーズでおなじみの作曲家で、藤原氏はロックバンド・BUMP OF THE CHICKENのボーカル兼ギターを担うミュージシャンである。藤原氏は主題歌やそのアレンジを中心に作編曲している。本作ではシリアスな作風にあわせて、壮大なオーケストラサウンドが多く揃っていて、前述の主題歌アレンジを効果的に用いることで豊かなメリハリを生み出している。サウンドトラックは藤原氏の担当曲のみを収録したソロアルバムと、主題歌を除き全曲を収録した通常アルバムの両方が発売されている。

ラストダンジョンにおけるアッシュとの一騎打ちで流れるのがこの曲である。出生にまつわる暗い過去ゆえに自身の存在の危うさに苦しみ続ける主人公・ルークは、作中で幾度となく彼と瓜二つの容姿をしたアッシュと剣を交えることになるが、この戦闘が最後の一騎打ちにあたる。主題歌『カルマ』のインストアレンジで、『カルマ』自体がストーリーの核心に迫る内容を歌っていることから、この曲もまた物語で大きな意義を持つ。トランペットとバイオリンを交互に奏でてメロディーを繋いでいき、その先に待ち受けるサビのオーケストラで、ルークとアッシュという鏡合わせの二人を象徴的に表現している。ボーカルを外すことによって、むしろいっそう歌詞の内容を思い出させてくれるような印象を与える。ここぞとばかりの主題歌アレンジで互いに譲れない決戦を力強く盛り上げる一曲である。

盛り上げ方がとてもうまいですよね。主題歌もあわせてどうぞ。

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