大宮ソフトがおくるカードゲーム+ボードゲーム・カルドセプトより、
伊藤賢治・高野智恵美作曲、リボルトの『神秘の館 勝利目前』。
ソムニア戦のステージ後半で流れます。
ボードゲームのとっつきやすさとトレーディングカードゲームの奥深さをいいとこどりして誕生したカルドセプトシリーズのうち、リメイクを除くと10年ぶりの完全新作として登場した本作。カードで戦うボードゲームという主旨はそのままに、旧作と比べてかなり劇的にゲームバランスやテンポが変化した。ダイスが2つに増え、領地コマンドの適用範囲がマップ全体の自陣に拡大、砦と城はゲートに一本化されたほか、新要素としてスキルポイントを振り分けてカードを自分好みに育成するブリードカード、クリーチャーの特殊能力として領地能力に代わる秘術が導入された。大幅にシステムを刷新した意欲作として、セプターたちに新たな対戦の可能性を切り拓いた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏および高野智恵美氏、八幡浩暢氏、渡邊雄基氏の四名である。伊藤氏はカルドセプトシリーズにはセカンド以来携わっているフリーランスの作曲家で、その他は音楽制作会社ジョーダウンスタジオ(前作に引き続きの参加)に所属する作曲家たちである。伊藤氏はメインコンポーザーとして、メインテーマや戦闘曲全般をはじめとする数多くの楽曲を作曲している。とりわけステージ兼戦闘曲は、シリーズおなじみの前半・後半・戦闘という区分を受け継ぐ形で、戦況に応じて序盤・勝利目前・バトルとそれぞれ三種類用意されていて、そのどれもが試合の駆け引きを大いに盛り上げてくれる。サウンドトラックはボーナストラックとして伊藤氏本人によるメインテーマのセルフアレンジも含めて収録されている。
ソムニア戦の後半で流れるのがこの曲である。敵側・伯爵軍に所属し、図書館の司書を務める女性で、慇懃無礼で冷たく突き放すような態度を取る。そうした彼女の特徴をよく捉えたミステリアスな民族音楽調が印象的である。前半戦の『神秘の館 序盤』と同じく幻想的な雰囲気を纏いつつ、アップテンポでエスニックな色合いをさらに強めることで、ますます白熱する試合展開を扇情的に彩る。笛やアコーディオン、弦楽器などによる華麗な旋律と、絶えずリズムを刻む独特な音使いが、吸い込まれるような没入感を生み出す。聴けば聴くほど思考が捗るような一曲である。
ループの境目(1分半あたり)が良いですね。華やかに盛り上がっている最中なのに、一瞬で素朴なイントロのフレーズに回帰するのが何とも言えず癖になります。『神秘の館 序盤』もあわせてどうぞ。