作曲者不明（便宜上、詳細は後述）、『BEAT OF EMOTION』。ラスボス戦の曲。
メガドライブ後期のRPGとして登場した本作。国策により冒険が奨励される王国にて、冒険に出たきり行方不明となった父を探すべく、主人公が旅に出ることになる。王道を極めたシナリオが特徴で、戦闘システムは当時としては珍しいタクティカルバトルを採用しているほか、RPGでありながらレベルの概念が存在しない点が印象的である。派手さはないが意欲的な要素もすくなくない仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは、スタッフロールの表記に従うならばKOUICHI SHIMAMURA（島村孝一）氏とMAMI TANAKA（たなかまみ）氏である。ただしEGG MUSICから発売されている本作のサウンドトラックでは島村孝一氏ではなく島村陽一氏と記載されていて、情報が錯綜している。そのため、ここでは便宜上作曲者不明という扱いにする。メガドライブ内蔵のFM音源を使って奏でられるシャープでエレクトリックな楽曲の数々は、オーソドックスなファンタジーの世界観を手際よく表現した佳曲揃いである。曲数も30以上と90年代初期の作品にしてはかなり凝っている。
本作のラスボスであるブラックドラゴンとの戦闘で流れるのがこの曲である。父との再会を果たし、最後の戦いに臨む主人公一行に立ちはだかる最強の敵として、暗闇のなかから姿を現す瞬間に、この曲の超高音のイントロが流れ始め、戦闘開始の合図である「BATTLE!」の文字が表示されると同時に、13秒からの疾走感あふれる主旋律がスタートする。耳を劈くような鋭利な高音が、息もつかせぬ勢いで目まぐるしく展開し、「感情の鼓動」という曲名にふさわしい張り詰めた昂揚感が、ラストバトルを華麗に彩る。FM音源ロックの一つの完成形とも言うべき強烈な印象を残す一曲である。
ざらざらした音源だからこそ、この荒々しい感じが相乗効果でよく映えますね。
※コメントでご指摘いただいた点に基づいて内容を加筆訂正しました。
