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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#364 『Is Not Mute』(高田雅史・福田淳/コンタクト/NDS)

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グラスホッパーマニファクチュアがおくるRPG・コンタクトより、

高田雅史・福田淳作曲、『Is Not Mute』(仮称、後述)。エピローグで流れます。

風変わりな作風で知られるグラスホッパー・マニファクチュアのDS初期のRPGとして登場した本作。ひょんなきっかけで出会ったハカセに協力すべく、主人公のチェリー(≠プレイヤー)を、プレイヤーがDSを通じて冒険を手助けするという、メタフィクション的な世界観が特徴である。メインシナリオこそ短いが、パロディやブラックユーモアが非常に豊富で、数多く搭載されているサブイベントのなかには、同時に四人攻略できる恋愛要素まで充実しているなど、随所に挑戦的な姿勢が窺える。とりわけクライマックスのどんでん返しはかなり癖のある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは高田雅史氏と福田淳氏。両名ともに当時GHMに所属していた作曲家で、本作以前にはkiller7、本作以降にはノーモアヒーローズなど、タッグで作曲することが多い。本作では全体的に古き良きRPGを彷彿させるノスタルジックな雰囲気にあわせて、イージーリスニングアンビエント調の落ち着いた楽曲が多く、ライトでコミカル、それでいてときどきダークでシニカルなタッチにふさわしい珠玉の名曲が揃っている。残念ながらサウンドトラックは発売されていないため、曲名は便宜上の仮称とするが、一部楽曲はゲーム内で入手・再生できるCDに収録されていて、ここでは(おそらく正式名称と思しき)そのタイトルに則って表記する。

この曲、クリア後に自動的に入手できるCD三枚のうちの一つに収録されている『Is Not Mute』は、エンディング後のエピローグにて、チェリーが帰宅する際に流れる一曲である。オルゴール風の煌びやかな音色に、溜め息を思わせる気だるげなコーラスが合わさって奏でられる旋律は、直前のシナリオ展開の余韻に浸らせてくれるような静かさと温かさを併せ持っている。複雑に絡み合った音使いが紡ぐ切なくもドラマチックな曲調は、胸を締め付けるような痛ましさにあふれていて、ハッピーエンドには程遠いが、かといってバッドエンドとも言えない微妙な空気感を見事に表現している。

ブログ開始当初から紹介したかった一曲です。他にもコンタクトは良曲揃いですので、曲だけでもぜひ。個人的にはヴェルモンタル城の城外BGMとかも聴き心地が抜群で大好きです。あわせてどうぞ(下記動画の尺が17分なのは1ループが9分近くあるため)。

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