SILDRA COMPANYで配布されているフリー素材より、
yukino作曲、『傾いた人形』。停滞少女などで使われています。
主にファンタジーRPGに合いそうな音楽素材を無料で提供しているSILDRA COMPANY。著作権表示をおこなえば非営利目的で素材を用いるのはもちろんのこと、加工・再配布・転載もすべてOKという寛大さが魅力で、ファイル形式はmidi、mp3、oggの三種類が取り揃えられている(上記で紹介しているのはmidi版)。現在までに歌モノ含め97曲公開されていて、いずれの楽曲にも作曲家であり、ときにボーカルも担当するyukino氏自身のコメントが付されている。
『傾いた人形』と題されるこの曲は、SILDRA COMPANYの作品のなかでも最古参に分類されるyukino氏初期の作曲である。作者コメントでは「古時計が時を刻む洋館。誇りをかぶり首を傾げたフランス人形。悲しそうな瞳。」とあり、楽曲を表すキーワードとしては「不思議」「童話」「暗い」という単語が当てられている。こうした特徴を踏まえたうえで、実際にゲームで使用された例を挙げると、ツクール2000製のフリーゲーム・停滞少女において、物語の舞台であり拠点となる時計の国の中心部で流れる。どこか煤けたような色味を帯びた、ひとけのないミステリアスな街並みにぴったりである。なお、停滞少女ではこの曲以外にもSILDRA COMPANYの楽曲が数多く使われていて、一種独特な憂いに満ちた世界観を形成するにあたって大きな役割を果たしている。
バンドネオンとクラリネットによる美しくも儚いメロディーラインは、時計の針を思わせる規則的なチクタク音と相まって、不思議の国に迷い込んだのかと錯覚しそうになる浮世離れした空気感を生み出している。ハープシコードとグロッケンの煌びやかな音色は、どことなくノスタルジーを感じさせ、30秒以降は断続的にトライアングルの金属音が鳴り響くことで、ますます妖しげな雰囲気を醸し出す。サビが終わりに近付き、ループに差し掛かる頃、それまで和音のみを専門に奏でていたハープシコードが、56秒あたりで束の間の主張をし、それがおさまると例のチクタク音で有終の美を飾る。
SILDRA COMPANYは一曲終わったら自動で次の曲が再生される仕組みなので、ときどき流しっぱなしにして聴いています。midiも悪くないですが、サイトではmp3版が聴けるので、よろしければぜひ。