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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#386 『Secure Place』(上田雅美/バイオハザード2/PS)

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カプコンがおくるサバイバルホラーアクション・バイオハザードより、

上田雅美作曲、2の『Secure Place』。セーブ部屋で流れます。

バイオハザードシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。前作の一連の猟奇事件から二ヶ月、ラクーンシティ市警に配属が決まった新米警官・レオンと、行方不明の兄の消息を追う女子大生・クレアは、知らずゾンビの蔓延る街へと足を踏み入れることになる。表と裏の二つのシナリオが交錯するザッピングシステムを初めて導入した作品で、前作の舞台は洋館だったが、本作は街全体に移されていて、そこらじゅうに蠢くゾンビの群れや奇怪な仕掛けの数々が、本能的に恐怖を喚起してくれる。周回要素や隠しシナリオも充実していて、様々なハードに移植されたうえ、リメイク版のRE:2もPS4Xbox One、PC向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは上田雅美氏、内山修作氏、西垣俊氏の三名。いずれも当時カプコンに所属していた作曲家たちで、現在はそれぞれフリーで活動している。このうち上田氏は前作の作曲経験があり、後に3でも引き続き作曲を務めることになる。パニック映画さながらのシチュエーションを彩る本作の楽曲は、ときに不気味なほど静かに、ときに苛烈なほど激しく、内なる恐怖心を呼び起こすような焦燥感に満ちたものが多く、危機的な状況をますます絶望の色に染め上げてくれる。サウンドトラックについては、一部未収録のものがある通常盤と、未収録曲に加えてメドレーアレンジを完備したコンプリート盤がそれぞれ存在する。

バイオハザードシリーズにおけるタイプライターとインクリボンといえば、セーブをするために必要なキーアイテムである。そのタイプライターが設置されている部屋、通称セーブ部屋で流れるのがこの曲である。ここまでくれば一安心という気持ちを代弁するかのごとく、ゆったりと奏でられるピアノとストリングスのアンサンブルは、プレイヤーを恐怖から解放し、束の間の癒しをもたらしてくれる。しかし、曲調そのものは決して明るく安らかなものとは言い難く、じりじりと精神を蝕むような不穏な音使いは、これから起こり得る恐怖の体験を予感させる効果を併せ持つ。安心と不安の相反する感情が共存する一曲である。

RE:2発売記念に(※記事執筆時)。安心できそうでできない、この微妙な塩梅がいいですよね。