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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#414 『Rainy Day』(Alec Holowka/Night in the Woods/PC・PS4)

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Infinite Fallがおくるインディー探索アドベンチャー・Night in the Woodsより、

Alec Holowka作曲、『Rainy Day』。雨の日の街で流れます。

故・Alec Holowka氏、Scott Benson氏、Bethany Hockenberry氏から成るデベロッパーチーム・Infinite Fallが開発した本作。大学を中退し故郷に帰ってきた雌猫メイを主人公に、懐かしの両親や友人たちと交流しつつ、すこしずつ移ろいゆく現実を目の当たりにしていくサイドビュー型のアドベンチャーゲームである。独特な陰鬱さを持つ奇抜なグラフィックとシナリオが特徴で、登場人物は皆一様に動物に擬人化されている。かつては鉱山で栄えていたが、今では色褪せてしまった故郷を散策したり、就職した旧友たちを訪ね回ったり、奇妙な事件に出くわしたり、おかしな夢を見たりして物語は徐々に進行していき、一見何でもない日常のなかに潜む複雑な人間模様や距離感を赤裸々に描き出した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは故・Alec Holowka氏。カナダ出身の作曲家である。氏は開発チームInfinite Fallの主要メンバーであり、本作ではゲームデザイン・プログラミング・作曲を手がけている。切なくも温かい故郷の街で繰り広げられる、ドキュメンタリーテイストの青春物語を綾なす本作の楽曲は、街のそこここに漂う退廃的な雰囲気を見事に反映したエモーショナルな曲調のものが多く、登場人物一人ひとりの傷心に寄り添うような繊細さにあふれている。サウンドトラックは三枚にわたって発売されている。

雨が降りしきる日、いつもとはすこし変わって見えるふるさとの街並みを静かに彩るのがこの曲である。深く沈み込むように奏でられるピアノの旋律には、楽しいはずの日々の生活に見え隠れする無常感、先行きが見えないことに対する漠然とした不安感、心と心が微妙にすれ違ってしまう焦燥感、そういったものがすべて綯い交ぜになった不思議な厭世観が滲んでいる。終始落ち着いた曲調のまま、時折管楽器やアコーディオンが加わるなどの楽器構成の変化こそあれ、全体を貫く雰囲気は変わることなく淡々と奏でられ続ける。心地良い響きのなかに、来る日も来る日も安逸をむさぼるメイの姿を痛々しいほど鮮烈に描いた一曲である。

現実逃避の葛藤のようなものが、すごく綺麗に音で表現されている一曲ですね。シンプルな曲名もまた良しです。