VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#806 『bool HasOwnIntension();』(杉江一/void tRrLM(); //ボイド・テラリウム/NS・PS4)

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日本一ソフトウェアがおくるローグライクお世話RPG・ボイドテラリウムより、

杉江一作曲、『bool HasOwnIntension();』。ラスボス戦で流れます。

htoL#NiQ(ホタルノニッキ)の流れを汲みつつ、アクションではなくローグライク型のダンジョンRPGとして登場した本作。文明が滅び、有毒な菌類が蔓延した世界を舞台に、スクラップ場で目覚めたお世話ロボットは、菌に侵された人類最後の少女・トリコが生存できる環境(テラリウム)を構築すべく、廃墟のダンジョンを探索して食糧や資材を集めることになる。入るたびに形状が変わるローグライクのダンジョンを攻略し、テラリウムで待つトリコの健康状態や空腹度にも注意しながら、物資を蒐集していく。トリコはゾンビ化したり体が液状化したりといった様々な奇病に侵されるため、適切な治療と最適な住環境を提供する必要がある。ボリュームは控えめだが、可愛らしくもグロテスクな側面を持つ退廃的な世界観が魅力的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは杉江一氏。フリーランスの作曲家で、日本一製の作品ではホタルノニッキ系列のタイトル(ホタルノニッキ、ロゼと黄昏の古城、そして本作)に参加している。ピアノを軸とした幻想的な曲調のものに、ロボットやAIが存在する作風にふさわしいフューチャリスティックなデジロックやEDM調のサウンドを掛け合わせた独特な楽曲群が取り揃えられている。サウンドトラックは限定盤に付属されていて、曲名はいずれもプログラムのソースコードのようなネーミングとなっている。

ラスボス戦で流れるのがこの曲である。はじめの10秒ほどは静かなピアノイントロが響き渡るが、それを過ぎた途端、電子音の波が傍若無人に荒れ狂い、静けさは瞬く間に紛うことなき激しさへと変容する。暴力的とすら言えるビートに、轟音に侵食されつつもあくまで凛々しさを保ち続けるピアノが組み合わさることで、無機質でありながら情熱的な、近未来的でありながら刹那的な衝動に満ちた印象を与える。トリコを守るため、トリコを救うため、ただそれだけの思いで戦うロボットの悲壮な決意を見事に体現した一曲である。

bool型はオブジェクトの真偽を判定するものなので、曲名はHasOwnIntension、訳すと「己の意志(≒強さ、性質)を持っている」かどうかを問うているということでしょう。曲名の付け方にまで世界観が浸透していて、それが曲そのものにもよくマッチしていて、なかなか素敵ですね。