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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#965 『Spiral Up Fortune』(山中季哉/罪と罰 地球の継承者/N64)

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トレジャーがおくるアクションシューティング・罪と罰より、

山中季哉作曲、地球の継承者の『Spiral Up Fortune』。1-2面で流れます。

トレジャーが任天堂とタッグを組んで開発した本作。人間にとって都合の良い食料源として異常環境下でも繁殖する生命体を開発するも、その一部が攻撃本能に目覚めて人間に反旗を翻した近未来の日本を舞台に、謎の超能力者・アチ率いる救済グループの一員として、アチの力の一端を授かった少年・サキは、混迷する戦場へと身を投じることになる。様々な思惑が絡み合う重層的な世界観と、64のコントローラに馴染むように設計された独特な操作体系が特徴で、移動(十字キーもしくはCボタンユニット)と照準(3Dスティック)を同時に制御してステージを攻略していく。硬派な作風ながらも、難易度を三種類から選択できるほか、照準をオートに設定することも可能で、遊びやすさに対する手厚い配慮が行き届いている。ハードSFの尖った雰囲気と、堅実で良好なゲーム性とが融合した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは山中季哉氏。当時トレジャーに所属していた作曲家である。本作の独創的な空気感を表現するにあたって、近未来らしい響きを帯びたサイバーパンクなロックナンバーが揃っていて、複雑だが不思議と耳馴染みするような、情熱と神秘が入り混じる楽曲群を堪能できる。サウンドトラックは残念ながら未発売だが、作中にサウンドテストが存在する。

新宿駅を舞台とするシーン1-2で流れるのがこの曲である。エレベーターに乗って目の前の敵を殲滅していくステージで、足場は安定しているがどんどん上へ上へと進んでいく疾走感を味わえる。そこで流れるこの曲は、その疾走感をさらに加速させるようなスタイリッシュな曲調が印象的である。電話の音のようにピロピロ鳴る電子音を響かせながら、浮遊感と重量感が共存する鮮やかなフレーズが響き渡り、30秒ほど経つと一旦音の波が引いていくような伸びやかな音色が奏でられる。が、すぐさま元の勢いを取り戻し、代わり映えしないが聴き飽きもしない心地良いリズムを反復する。エレベーターで上昇する感覚と相まって、爽やかな昂揚感を刺激する一曲である。

近未来の新宿というイメージにぴったりで、先へ進みたい意欲を掻き立ててくれますね。曲名は直訳すると「運命が螺旋状に上昇する」、運命が加速していくような感じでしょうか。